アジアの作家たち   絵本館Top

アジアの作家の絵本を集めました。 近年、アジアの作家の絵本が、かなり目立つようになりました。 特に韓国などの絵本は多いようです。 アジアの範囲は、ユーラシア大陸のウラル山脈以東とその周りの諸島と考えました。 中央アジア、インド、中東は、アジアの範囲としますが、 ロシア及び元ソ連の国々は含めませんでした。 また、文、絵のどちらかがアジアの作家であれば ということで、リストアップしました。

     「さんねん峠」 
     「おどりトラ」 
     「ソリちゃんのチュソク」 
     「こいぬのうんち」
     「幸せの翼」 
     「ヤンメイズとりゅう」 
     「桃源郷ものがたり」 
     「まほうのたいこ」
     「モンゴルの黒い髪」  
     「しーっ!ぼうやがおひるねしているの」 
     「はらぺこライオン インド民話 」 
     「ながいながいかみのおひめさま」 
     「ねこのくにのおきゃくさま」 
     「あくまのおよめさん」 
     「かなしみのたたかい」


オンライン書店ビーケーワン:さんねん峠 「さんねん峠」 李 錦玉・作 / 朴 民宜・  絵岩崎書店
朝鮮の昔話です。
あるところに、さんねん峠と呼ばれる峠がありました。あまり高くなく、なだらかな峠です。
でも、この峠で転ぶと、3年しか生きられないと言われていました。
そのため、人々は峠を越える時は、慎重に転ばないようにと、気をつけていました。

ある年の秋、おじいさんは反物を売った帰り道、さんねん峠で一休みします。
さんねん峠はとても美しい所です。おじいさんは、うっとりと眺め、つい時間を
過ごしてしまい、日が暮れかかりました。慌てたおじいさんは、急いで峠を下りようと、
しました。暗くなれば転ぶかもしれませんから。

でも、おじいさんは慎重に歩いていたのに、転んでしまいます。
おじいさんは、家に帰り着くと、泣いておばあさんに訴えました。
「わしはもう、3年しか生きられない、どうしよう」と。
その日からおじいさんは、寝付いてしまいました。
おばあさんは、つきっきりで看病するのですが、ますます重くなるばかりです。

村の人も心配しましたが、そんなある日、水車やのトルトリが見舞いに来ます。
そして、おじいさんに病気の治る方法を教えます。それは、もう一度、さんねん峠で
転ぶと言う方法でした。
とんでもないと言うおじいさんに、トルトリは説明します。
「さんねんで峠転べば3年生きられるから、二度転べば6年生きられる、三度転べば9年」
というように、何度も転べば、むしろ長生きできると、話します。

喜んだおじいさんは、早速、さんねん峠に行って、何度も転びました。
すると、ぬるでの木の陰から、面白い歌が聞えてきます。
「いっぺん転べば、三年で、十ぺん転べば三十年、百ぺん転べば三百年
こけて ころんで ひざついて しりもちついて でんぐりがえり
ながいきするとは こりゃめでたい」
もちろん、トルトリが歌っていたのです。
その後、おじいさんはすっかり元気になりました。

水車屋のトルトリの優しさが、うれしいお話です。
絵は、とてもやさしげで、誰もがニコニコしたくなるような感じです。
絵本の中で、おばあさんは、おじいさんが病気になっても落ち着いて、
笑顔でした。やっぱり女性は強い、ですね。


「おどりトラ 」 こどものとも世界昔ばなしの旅  韓国・朝鮮の昔話
金森 襄作・再話   鄭 【スク】香・画   福音館書店

「おどりトラ」は、踊りが大好きなトラです。自然に体が踊りだしてしまい、
狩りにならないので、トラ仲間を追い出されてしまいます。でも、人間の中に入って、
踊りを踊ると、病気が治るなどと有り難がれ、結構暮らしていけました。ある日、
たまたま、昔の仲間の近くに来たので、懐かしく仲間を訪ねるのですが。

おどりトラは、笛の音を聞くと、手足が勝手に動くほど踊りが好きと語られています。
その表情が、怖いトラの顔なのにユーモラスで、面白い絵です。
手足の様子など、スケッチの基礎が出来ていないのかしらと、思わせる描き方ですが、
そこが、むしろ力強さを思わせる不思議な絵です。
真上からトラを見たらなんて絵は、なかなか描けないのですが、迫力あるトラの絵に
なっています。


「ソリちゃんのチュソク」 イ オクベ・絵と文  みせ けい・訳   セーラー出版
「チュソク(秋夕)」とは、日本で言えばお盆のような感じです。
旧暦の8月15日(新暦9月の中旬頃)で、韓国ではお休みになるそうです。
秋の収穫を先祖に感謝して、町中でお祭りを行います。都市に住んでいる者は、
故郷に帰り参加します。

この絵本は、そのチュソクの様子を、ソリちゃんという小さな女の子を
主人公に描いています。故郷に帰る様子は、まるで日本のお盆の帰省ラッシュの
ようです。自動車の中の様子が、一つ一つ、面白く描かれているので、じっくり
見ていってください。

この絵本は、見開き2ページが一つの場面になっています。大きな画面に
一つ一つ丁寧に描かれ、様子がよく分かるようになっています。お隣の国の
伝統行事を知るということも、国際理解には大事な事です。
というほどの大上段に構えなくても、大変親しみ易く、「チュソク」について
描かれていますので楽しみながら、読んでください。

故郷の様子は、日本に良く似ていて、安らぐ感じがします。でも、やはり異国だと
思わせる人々の行為が、不思議な感じです。物語は特別にないのですが、内容は
とても楽しめるものです。


「こいぬのうんち」 クォン ジョンセン文  チョン スンガク絵  ピョン キジャ訳  平凡社
どんな物でも、存在の意義があるということを、「こいぬのうんち」
で、物語っています。

何の役にも立たないということを、嘆き悲しむ「こいぬのうんち」は、すぐそばに
生えて来たたんぽぽが、自分を必要としていることに、大きな喜びを得ます。
こいぬのうんちが、たんぽぽの肥料になることで、その一部になること、生命の循環
ですが、一種輪廻転生も思わせます。やはり、この辺がアジア人たる所以でしょう。


幸せの翼 ジミー作・絵   岸田 登美子・訳   小学館
amzonにリンクしています。amzonで表紙はご覧ください。
台湾の作家です。かなり人気がある作家で、たくさんの絵本が
出ています。どちらかと言えば大人用の絵本という感じです。
イラストが面白く、綺麗な絵ですからその意味でも楽しめます。

読む前に、つい最後の方を見てしまい、何となく今風の「癒し」系の話かと思い、
ちょっとガッカリしました。でも、読んでみると今風の「あなたはあなたのままで
いいのよ、それが幸せよ」というお説教ではなく、「あるがままを受け入れる事が
どれほど大変で、でもそうしなければ生きていけないのよ」と言う教えでした。

何不自由ない社長に、ある日突然翼が生えてきます。そして、翼はどんどん大きくなり
その翼が勝手に飛んでしまうので、思い通りにならない社長の彼は、檻の中で生活する
ようになります。やがて、翼を切ろうという話が持ち上がり、その決行の日、翼は空高く
飛び上がり、二度と戻ってきませんでした。でも、お話はまだ続きがあります。
全編、「彼は」と言う言い方で、翼が生えてきた社長の運転手が語り手になっています。

人気があるだけのことはあります。もう少し、探して読んでみたいと思っています。


「ヤンメイズとりゅう」 松居 直 / 関野 喜久子・再話   譚 小勇・絵  福音館書店
表紙画像ありませんが、bk1にリンクしています。
中国の昔話を、日本人の二人が再話し、中国の作家が絵を描いたものです。

シャオホンメイという女の子が龍にさらわれます。シャオホンメイは、自分を助ける事が出来るのは、
弟だけだと、言い残します。でも、母とシャオホンメイの二人暮しで、弟はいません。
母は、悲しみますが、ふと見たヤマモモの実を、食べます。すると不思議に、男の子が生まれます。

どこか、桃太郎に通じるような、展開です。昔話に、桃は若返りとか、魔よけと言われ、
登場します。ヤマモモも同じような理由かもしれません。

男の子は、ヤマモモの子「ヤンメイズ」と名づけられます。
ヤンメイズは、やがて、お姉さんを助けに出かけます。その途中で、蛇やカエルが踊りだす
笙を手に入れます。龍とであったヤンメイズは、この笙で、龍を懲らしめます。池に潜って
二度と悪さをしないように、約束させます。が、龍は再び現れ、襲い掛かります。
この時、姉のシャオホンメイは、悪い物は息の根を止めなければならないと、弟を諭します。

ヤンメイズは、笙によって、龍を退治し、二人は龍の屍骸をもって、家に帰ります。
龍の屍骸は、家を作りなおすために使い、さらに農作業用の鋤になり、三人は幸せに暮らしました。

絵は、好感の持てるかわいらしさと、勇ましさを併せ持っています。
色使いも美しく、中国の墨絵に色付けした感じです。

最後に、やはり男は甘く、女は逞しいと、思います。


オンライン書店ビーケーワン:桃源郷ものがたり 「桃源郷ものがたり」〔陶 淵明原作〕 / 松居 直・文 / 蔡 皋・絵   福音館書店
中国に古くから伝わる桃源郷のお話です。
松居直が、陶淵明の「桃花源記」をもとに文を書き、中国の女性の画家が、絵を描きました。

昔、晋の時代(今から1700年位前)に、ひとりの漁師が偶然桃源郷への道をたどります。
桃源郷は、字のごとく桃の花が咲く見知らぬ水路の先に、暗い洞穴があり、そこを抜けると、
桃の花の咲く穏やかな村が現れます。
      
人々は平和に穏やかに暮らし、外の世界のことを知りません。
村の人の話によれば、秦の始皇帝の時代に戦いを嫌い、逃げてきた人々で作った村で、
外の世界と行き来がないので、今の(漁師の時代、晋)世の中を知らないのです。
村の人は、漁師から外の世界について聴きたがります。
村のあちこちの家から、漁師は招かれご馳走されます。

漁師はやがて、家に帰ることにしますが、村人は決して村について口外しないように、
頼みます。でも、昔話によくあるように、口外したための罰はないようです。
かなり、現実的に描かれています。
その後、とのさまが(絵本にこうあります)漁師の話を伝え聞いて、桃源郷に案内
するように求めたのですが、村への道は二度と見つかりませんでした。
      
中国の女流画家の描いた桃源郷の様子は、本当に現実的です。
でも、平和で穏やかな村の様子が、よく分かります。


オンライン書店ビーケーワン:まほうのたいこ 「まほうのたいこ」 うちだ りさこ・ぶん / シェイマ・ソイダン・え  福音館書店
シベリアの昔話ですが、文は「うちだりさこ」が書いてます。

ある村に、おじいさんとおばあさんと、暮らしている女の子がいました。
ある日、女の子は、友達とツンドラへ食べられる草の根を取りに行って
迷子になってしまいます。でも、不思議な女の人に助けられ、一緒に暮らします。
やがて、女の子は家が恋しくなり、女の人に家まで送ってもらう事になります。

その時、女の人は、自分はこれから春まで眠るので、その前に送っていって
あげると言います。そして、女の子に太鼓をたたきながら踊りを見せ、その太鼓を
祭りにその通りに踊るように教え、渡します。

女の子が無事に戻ったのことを、お祝いしてたくさんの人が集まり、祭りが
行われますが、その場で女の子が太鼓をたたき、踊ると、たくさんの海草、木苺などが
でてきます。そして、女の子は村一番の、人気者になります。

絵はトルコの人です。やさしい色使いの絵です。見開き2ページが一場面になっています。
ページ全体塗りつぶさず、白い部分を残し、絵に軽さを持たせた感じです。


オンライン書店ビーケーワン:モンゴルの黒い髪 「モンゴルの黒い髪」 バーサンスレン・ボロルマー絵・文 / 長野 ヒデ・訳  石風社
モンゴルの民話を元に、作者の創作も取り混ぜたものです。
モンゴルの伝統的な文化、習慣を作品を通して紹介しています。
モンゴルの女性の髪型についての伝説的物語です。

むかし、モンゴルへ攻め入ろうとした悪者がいました。カササギがそれを知らせ、
男たちは、悪者を追い払う為に、出かけます。でも、残された女性と子どもをどのように
守ったらよいかと、考えました。村には、邪悪なカラスが差し向けられていたのです。

女性たちは、長い黒髪を大きい鳥の羽に見立てて、邪悪なカラスを追い払おうと、
考えました。長い黒髪を二つに結い、カラスより大きな翼に見せかけました。
このために、邪悪なカラスは追い払う事ができ、男たちも敵を追い払い帰って
来ました。


「しーっ!ぼうやがおひるねしているの」
ミンフォン・ホ作  ホリー・ミード絵  安井 清子・訳  偕成社

ぼうやがお昼寝しているので、まわりのものに「しーっ、静にして」と
呼びかける若い母親のお話です。

作者は、ミャンマーに生まれ、幼い頃タイで暮らしていたそうです。
絵は、アメリカ生まれの人ですが、民族的にはわかりません。名前だけでは、
想像できませんので。

「静にして」と呼びかける相手は、蚊、ヤモリ、猫、ネズミ、かえる、ブタなど
身近な動物です。でも、最後の方に出てくるのは、猿、水牛、象で、
日本では動物園でしか、見られません。それらの動物の鳴き方が、日本とは違います。
また、タイの家の様子も分かって、楽しいです。

1997年度のコルデコット賞次席作品です。


「はらぺこライオン インド民話 」  
ギタ・ウルフぶん  インドラプラミット・ロイえ   酒井 公子やく    アートン

インドの民話とありますが、古代東インドに良くみられるお話だそうです。
同じテーマの話は、インドをはじめ他の諸国にありますので、どこかで聞いた話だと、
思える内容です。この絵本はギタ・ウルフが民話を元にして書いたものですが、
独創的、創造性にあふれた作家で、多数の賞を受賞しているそうです。
因みに、女性です。

絵は、インド西部に住むワルリー族に伝わるワルリー画風に描かれています。
ワルリー族は、森羅万象に精霊が宿ると考えています。そのワルリー族が、描く絵で
題材は、日常生活、神話、伝説などです。描き方は、家々の赤土の壁に、米をすり潰し、
水で溶かした顔料で竹のペンを用います。

この絵本では、お米の籾殻と木綿の繊維から作られた再生紙を使用し、手捺染という
技法で描かれました。
この作家も現代インドで最も期待されている現代美術家の一人で、多数の賞を受賞して
います。

土器に描かれている絵か、古代エジプトの象形文字を思わせる絵で、シンプルながら
暖かな感じです。
ライオンは、インドにもいるそうで、猛獣の王が知恵の在る餌(鳥、ヤギ、鹿)に
騙されるお話は、為政者がしたたかな民衆に騙されたようで、面白いです。


オンライン書店ビーケーワン:ながいながいかみのおひめさま 「ながいながいかみのおひめさま」 
コーミラー・ラーオーテ文 / ヴァンダナー・ビシュト絵 / 木坂 涼・訳  アートン

インドの作家の絵本です。
パリニータという、長い長い髪のお姫さまが、いました。
その髪はとても素晴らしく、きらきらと輝き、さざなみのように波打ちます。
王様もお后様も、姫の長い髪が自慢でした。

ところが、姫はお城の外に出た事もなく、遠い山並みを眺めては、行ってみたいと思っていました。

王様は、姫の髪がお城の一番高い部屋から、地面に付くようになったら、盛大なお祭りを
行い、集まった王子の中から、婿を決めるようにといいました。
でも、姫はまだ結婚したくありません。祭りの当日、悲しい顔をした姫がいました。

姫は、決心してお城を抜け出しました。お城の外に出たのです。
お城の外はごつごつして、歩きにくかったのですが、パリニータは気持ちよく歩き続けました。
歩いていくと、裸の赤んぼを抱いた女性に会います。姫は、長い髪を差し出して、赤んぼをくるむ
布を織るように、言います。こうして、姫は困った人や動物に出会うごとに、自分の髪を差し出し、
とうとう、髪が一本もなくなりますが、気持ちは明るく、心の中に朝日がさしてきたようです。

やがて、パリニータは山の中へ姿を消しました。ときおり、パリニータの歌声が、風に運ばれて、
漁師の元に届きます。すると、漁師たちは微笑んで「ほら、おひめさまが うたってる!」と
いうのです。

絵は細かい部分まで描かれていますが、色合いが軽やかに明るく、重さはありません。
また、途中から姫自身の姿が、描かれず、周りの楽しそうな風景になります。
この絵によって、姫自身の心中を表しているようです。


オンライン書店ビーケーワン:ねこのくにのおきゃくさま 「ねこのくにのおきゃくさま」
シビル・ウェッタシンハ・さく / まつおか きょうこ・やく  福音館書店

ねこのくにがありました。ねこたちは働き者で、何不自由なく暮らしていました。
でも、幸せと言うわけではありませんでした。ねこの国の人たちは、楽しむ事を知らなかったのです。
音楽も踊りもなかったのです。
ある日、海の向こうから、不思議なお面をつけた二人のお客様がやってきました。
不思議なお客様は、音楽を奏でながら踊りました。ねこの国の人たちは、この踊りを見て、
とてもよい気持ちになりました。

やがて、王様に招かれた不思議なお客様は、王宮で踊ります。
踊りが終わると、王様は二人を晩餐会に招きました。そして、いつも取らないお面を取って
欲しいと頼みました。すると、二人は命を守る為に、取れないのだと、拒みます。
王さまは、これからも友人として付き合うのだから、ぜひとって欲しいと望みます。
二人は、王様に命の保障を約束させ、お面を取ります。なんと、お面を被っていたのは、
ねずみだったのです。

王宮中、丸々と太ったねずみを食べたくて、大騒ぎになりました。
でも、王さまは名誉にかけて命を守ると約束したのです。その約束は破れないと、
皆を落ち着かせました。王さまは、ねずみたちの勇気を褒め称えました。
ねずみたちははその後も何日か王宮に滞在し、子どもたちに踊りを教えて帰りました。

こうして、ねこの国にも音楽と踊りが伝わり、ねこの国の人たちは、幸せになりました。

スリランカの作家のお話です。ねこの国にねずみが音楽を教えに行くと言う、不思議な
シチュエーションです。生まれつきねこって、のんびりしていて、働き者には見えませんが。

絵はクレパスで紙の質感を生かしたような描き方です。ねずみの踊りの様子など、躍動感が
あります。全体的には、パステルカラーのやさしげな感じです。


「あくまのおよめさん」 ネパールの民話
稲村 哲也/結城 史隆・再話  イシュワリ・カルマチャリャ画  福音館書店

ネパールの民話です。
昔、ラージャンと言う男の子が、道で銀貨を拾います。そのころ、村では凶作で
食べるものがなく、大変でした。でも、ラージャンがその銀貨で買ったのは、猿
でした。両親は、猿など役に立たないというのですが、ラージャンは大切に育てます。

やがて、猿が大きくなると、この村に住む「あくま」の家で、たくさんの宝石を見ます。
猿は、知恵を働かせ、とうとう村で悪事を働いていた「あくま」を懲らしめ、追い出す
ことに成功します。その作戦で、「あくまのおよめさん」が登場するのです。
いつも思うことですが、こういう昔話では、容赦なく「あくま」が懲らしめられますが、
何となく、可愛そうな気もします。

再話は、日本人ですが、絵を描いているのがネパールの人です。ネパールのネワール族の
伝統絵画ということですが、インド風との区別が、素人には分かりにくいです。
色使いなど、日本にはない雰囲気ですので、その辺もじっくり見てください。


オンライン書店ビーケーワン:かなしみのたたかい 「かなしみのたたかい」 
ハミド・レザ・ベイダーギー作・絵 / おおいし まりこ・訳  新世研

イランの伝説です。
ペルシャで一番の戦士ロスタム、その隣国のトーランで一番の戦士ソラブが戦います。
でも、この二人は親子だったのです。それを二人は知らずに戦い、父ロスタムは息子のソラブを
殺してしまいます。

なぜ、親子と知らずに戦う事になったか。
ロスタムは、若い頃、トーランで馬盗人に遭い、それを取り戻しに行った時に、
トーランの王様に気に入られ、姫のターミネと結婚しました。そして、子どもが生まれると言う時に、
ペルシャに戦のため、呼び戻されました。ロスタムは、子どもが生まれたらつけてほしいと、宝石の
ベルトを姫に渡していました。

やがて、生まれた子どもがソラブでした。時が過ぎても、戦は終わらず、ロスタムは、姫と子どもの
所へ戻ることが出来ませんでした。
ソラブは、王の孫として様々な武術を身に付けて、一番の戦士になりました。でも、父にその姿を
見てほしいと思っても、かえって来る様子はありません。そこで、ペルシャをトーランが併合すれば、
父親とも逢えるのじゃないかと、考えます。

トーランの王も領土の拡大には大賛成でした。こうして、軍隊を連れて、ソラブは、ペルシャに
向かったのです。
そして、悲劇が起きました。取り返しの付かない悲劇が。
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