感動することがなくなったな と思ったら     絵本館Top

 

「ないたあかおに」
「岸辺のふたり」
「はしれ江ノ電ひかりのなかへ」
「走れメロス」
「ゆうかんなアイリーン」
「どきっ!恋するってこんなこと」
「ふつうに学校にいくふつうの日」
「こんとあき」
「綱渡りの男」
「人魚姫」 ラズロ・ガルえ
「人魚ひめ」 ツヴェルガー絵


オンライン書店ビーケーワン:ないたあかおに 「ないたあかおに」 浜田 広介・文 / 岩本 康之亮・絵  世界文化社

「ないたあかおに」のお話は、どなたもご存知と思いますが、
(このお話を知らずに大人になった人もいますが、身近に一人・・・
わたしの配偶者``r(^^;)
だれでも、このお話に涙しない人は、いないのじゃないかと、
思っています。

この本は、浜田ひろすけ自身が、原作を小さな子供用に書き直した、
文章量の少ない原稿をもとにしたものです。
また、絵を描いた岩本康之亮は、独特の美しい画風に定評があると
説明されています。
説明の通りで、絵が気に入っていて、「ないたあかおに」の絵本として、
ここで、取り上げました。

最後に「ないたあかおに」と父、という題で浜田留美という娘さんの
文章が載っています。
浜田ひろすけのエピソードが、じんわりと素敵です。



オンライン書店ビーケーワン:岸辺のふたり 「岸辺のふたり」 マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット作 / うちだ ややこ・訳  くもん出版

この絵本は、最初はアニメーションとして作られました。
私は、偶然ですが、そのアニメをTVで見た事があります。
絵本を見た後だったか、先だったか、今では、判然としませんが。
絵本もアニメも同じ色、セピア色です。

父と娘が、自転車に乗って岸辺に来ます。
父は、ボートで一人漕ぎ出し、そのまま、帰りません。
娘は、やがて、恋をし、結婚し、家族が増え、そして、
年老いて、またひとり、岸辺にやってきます。
すべては、やがて一になる、そんなイメージでしょうか。

でも、わたしは、不思議な感覚を素直に感じ、泣きました。



オンライン書店ビーケーワン:はしれ江ノ電ひかりのなかへ 「はしれ江ノ電ひかりのなかへ」 金子 章・作 / 渡辺 有一・絵  PHP研究所
拡張型心筋症という重い心臓病を患っている少年の夢をかなえるお話です。
「メイク・ア・ウィッシュ」というボランティア団体の紹介で、このお話はTVでも、
取り上げられているので、ご存知の方も多いと思います。

「ともくん」の母親は、拡張型心筋症という病気でともくんが9歳の時に亡くなります。
ともくんも同じ病気で、小さいときから外で遊ぶことができず、家の中で電車のおもちゃで
遊ぶことが大好きでした。特に江ノ電は大好きで、大人になったら江ノ電の運転手のなりたい
と思っていました。

中学生になると、病気はますます重くなり、入院生活を送るようになります。
そして、主治医から父親はともくんの余命を告げられます。その時同時にともくんの夢を
かなえてあげたらと、「メイク・ア・ウィッシュ」を紹介されました。
ともくんの夢をかなえるために、周りに人たちは協力しました。この間の様子は、
TVで紹介されたので、涙無しでは(涙もろい私としては)読めませんでした。
(人々の協力は、何にも代えがたい素晴らしさが・・・・。月並みですが)

江ノ電の運転席に座ったともくんは、その3日後、静にひとり「ひかりのなかへ」
出発します。最後のこの見開き2ページは、明るい光の色に満ち、江ノ電がともくんを
乗せて、出発する絵です。


「走れメロス」 太宰治・作 戸田幸四郎・画 戸田デザイン研究室
この絵本は、本屋さんにありますが、表紙画像がありません。
このお話は教科書などにも載っているので、ご存知の方が多いと思います。
人を信じることの大切さ、友情、について、かなりありえないシチュエーションで、
描かれています。初めて読んだときから、自身息切れがするような息苦しさがありました。
息をつかせず一気に読ませる迫力というより、鬼気迫る感があります。
でも、何度読んでも目の前に差し出されると、読んでしまうという作品です。

内容について、簡単に。
人を信じることができなくなった王様をいさめたメロスは、死刑に処せられることになります。
しかし、妹の結婚式を挙げるまで、親友のセリヌンティウスを身代わりに、村に帰ります。
王は「これだから人は信じられないと、セリヌンティウスを処刑すればよい」と考え、メロスは
「何があっても、人が信じあう大切さを、王に分からせてやる」と考えています。
約束の刻限に、ぎりぎりで間に合ったメロスは、セリヌンティウスとともに再会を喜び、
王に信じることを、教えます。王は、それに答えて、二人を赦します。

この絵本は、作品の迫力に負けない絵が描かれたものです。


オンライン書店ビーケーワン:ゆうかんなアイリーン 「ゆうかんなアイリーン」 ウィリアム・スタイグ作  おがわ えつこ・訳  セーラー出版
はっきりと年齢が書かれていませんが、小学校高学年位の感じの
アイリーンと言う女の子のお話です。

お母さんが作り上げたドレスを、雪の中、風邪を引いたお母さんの代わりに、
お屋敷まで、アイリーンひとりで届けます。でも、途中吹雪になり、ドレスを
飛ばされてしまいます。その上、道に迷い、遭難しかけるのです。

アイリーンが大きなドレスの箱を持って、吹雪の中を歩く姿が表紙になっています。
お母さんの代わりに、一生懸命になっている様子が、しっかり伝わってきます。
それに、遭難しかけた時のアイリーンの言葉は、とても素敵です。
「このまま しんでしまったら、もう おかあさんに あえないんだ。
やきたてパンみたいに いいにおいのしてた おかあさん」

やきたてパン、日本風なら、炊きたてご飯かな。
でも、お母さんを表す言葉、そのものですね。

アイリーンは、ゆうかんにやり遂げます。お屋敷では、おいしい御馳走を
頂き、素敵な紳士とダンスも踊ります。

翌朝、送ってきた人たちが、お屋敷の奥様からの手紙を携えています。
「アイリーンは すばらしい おこさんですよ」
でも、このことは おかあさんが いちばん よく しっていたのです。
と結ばれます。


オンライン書店ビーケーワン:どきっ!恋するってこんなこと 「どきっ!恋するってこんなこと」 みやにし たつや作・絵  岩崎書店
恋をした日のどきっ!なんて、もう忘れちゃったわ、という方も
この本を読めば、ああそういえばこんな日もあったなあ・・・って。
今、恋している方ならば、そうそう、こんな感じ、って思える絵本です。

一つのストーリーではなく、いくつもいくつものエピソードが、描かれます。
恋する二人は、おおかみくんとぶたさんです。らんぼう者のおおかみくんが、
ぶたさんに恋したとたん、野原のお花を優しく髪飾りにしたり、怪我をしながも
ぶたさんのために木になっている果物を取ってあげたり。
ぶたさんだって、負けてません。おおかみくんと、夜空に向かってほえてみたり、
おおかみくんと一緒に泥んこ遊びをして、ともだちにあきれられたり。

恋している二人は、周りがどういう反応を示すかじゃなくて、恋しい相手のことしか、
見ていないのです。
そういう経験、恋したことのある人なら、遠い昔でも、思い出しますでしょう?
遠い昔の日々を思い出し、ちょっとどきどきしてみませんか。


オンライン書店ビーケーワン:ふつうに学校にいくふつうの日 「ふつうに学校にいくふつうの日」 
コリン・マクノートン文 / きたむら さとし絵 / 柴田 元幸・訳  小峰書店

ふつうの男の子が目を覚まして、ふつうに学校に行きます。
でも、その日はふつうじゃない先生がやって来て、ふつうじゃないことが始まります。
音楽を聴いて絵を描くという授業でした。

ふつうの男の子は、音楽を聴くとゾウの大群を思いました。そして次から次へ、
想像が膨らんでいきます。ふつうの家に帰ると、ふつうの生活をしてふつうに
寝たのですが、ふつうじゃない夢をみました。この夢が、後ろの見返しに続いています。

先生が登場するまで、薄い灰色の世界ですが、先生が色を持ち込むように、
絵本の絵も色づきます。きたむらさとしらしい色使いです。

今回、きたむらさとしの漢字を知りました。考えていたのとは、違う字でした。


オンライン書店ビーケーワン:こんとあき 「こんとあき」 林 明子・さく  福音館書店
「こん」はきつねのぬいぐるみです。「あき」が生まれてくるのを
待っている場面から始まります。こんは、あきのお守をするように、おばあちゃんから頼まれて
やってきたのです。

やがて生まれたあきは、こんといつも一緒です。あきが少しづつ大きくなる様子が、
こんと一緒に描かれています。でも、こんは、だんだん古くなります。
ある日、とうとう腕がほろこびました。

二人は、さきゅうまちのおばあちゃんに、こんの腕を直してもらおうと思い、出かけます。
二人は列車に乗ります。お弁当を買いに行ったこんが、しっぽをドアに挟まれて、車掌さんが、
包帯を巻いてくれました。さきゅうえきで降りた二人は、おばあちゃんのところに行く前に、
さきゅうを見に行きます。

さきゅうは広くて、あきははじめてさきゅうを見ました。
この場面の絵がとてもいいです。二人の背後から、読者も同じように砂丘を眺める構図に
なっています。砂丘はどこまでもずっと向こうの方まで、広がっています。でも、寂しさはなく、
温かみのある色合いに、ほっとします。

こんは、さきゅうで、犬に連れて行かれてしまいますが、無事にあきが助け出します。
おばあちゃんのところで、こんはきれいに直してもらい、できたてのきつねのようになりました。

優しさにみちたお話です。絵も優しく語りかけてくるような感じです。
最初と最後のページが、こんの型紙のようになっています。なかなかおしゃれな演出です。


オンライン書店ビーケーワン:綱渡りの男 「綱渡りの男」 モーディカイ・ガースティン作 / 川本 三郎・訳  小峰書店
この絵本は、「昔、ふたつのタワーがならんで立っていました。」と
始まります。「昔」「ふたつのタワー」・・・いったい、何時の時代のことだろうと、
思いますが、これは現代のお話です。実話を元にしたもので、1974年8月7日の
出来事です。では、なぜ「昔」で「立っていた」と過去形なのかということです。

「ふたつのタワー」とは、ニューヨークの世界貿易センタービルのことです。
あの、テロにより崩れ去ったふたつのビルです。その出来事を文字にすることなく、
言い表したのが、この書き方です。たった30年前のことを、「昔」とまるで
昔話をするように、書き出さなければならないと言う現実が、私たちの目の前には
広がっているのです。はっきり文字にするより心の中に、ずんと現実が入って
きます。

この絵本のお話は、実話を元にしています。
フランス人大道芸人フィリップ・プティは、まだ完成していない貿易センタービルで、
綱渡りをしたのです。もちろん、許可が下りるわけはありません。捕まるのは覚悟の
上で、協力した友人たちと綱を一晩かけて張り、約1時間空中にいました。

以前、フランスにいた時にノートルダム寺院でも、二つの塔の間にロープを張り、
綱渡りをしたことがありました。フィリップは、高い塔を二つ見ると、その間に
ロープを張り綱渡りをし、ボールが三つあれば、お手玉してみるという青年でした。
貿易センタービルが、どんなに高くてもフィリップには、綱渡りをするために
あるように、見えるのです。

綱渡りをしている場面は、2ページの見開きプラス1ページの開きが付いています。
3ページ分に描かれている情景は、絵だけでも目が回りそうです。一本の綱の上で、
バランス用の棒を持ったフィリップが立っている側を、カモメが飛び回ります。
そして、「ここには、ぼくひとり。なんて幸せで、自由なんだろう。」と。

捕まったフィリップに、課せられた罰は「街の子どもたちのために、公園で、
綱渡りをするように。」というものでした。おしゃれな裁判官ですね。(^^ゞ

そして、「ふたつのタワーは、いまはもうありません。」
「でも、人々の記憶の中には、ふたつのタワーは、空にきざみつけられたように
くっきりと残っています。」と結ばれます。

絵の感じは、やや色彩が暗いような感じがありますが、見開きにさらにプラスする
など、迫力或る絵で綱渡りの様子を伝えます。特に表紙は足元だけを描き、高さを
十分に感じさせます。


「人魚姫」
ハンス・クリスチャン・アンデルセンげんさく / マーガレット・C・マローニーさいわ / ラズロ・ガルえ / かつら ゆうこ・やく  ほるぷ出版
表紙画像は在りませんが、bk1にりんくしています。

「人魚ひめ」 原作 H・C・アンデルセン  文・角野栄子  絵・リスベート・ツヴェルガー  小学館
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2冊ともアンデルセン原作の「人魚姫」のお話です。
上記の「人魚姫」は、ラズロ・ガルという画家で、「人魚ひめ」は、ツヴェルガーです。
どちらも、ステキな絵です。

ラズロ・ガルの方は、癖のない写実的な感じの絵です。
人魚姫は自分の娘さんを、人魚姫を育てたおばあさんは、自分の奥さんをモデルにしています。
解説によると、1メートルくらいの大きな絵で描き、印刷時に絵本の大きさにてあるそうです。
そのように描くと、小さな部分もきちんと描けて、美しく仕上がるとの事です。

ツヴェルガーは、ややシニカルで癖がありますが、透明感のある美しい絵です。
こちらは、より空間が大きく取られ、魚が泳ぐ様、珊瑚の揺れる様など、幻想的な
雰囲気をかもし出しています。そして、俯瞰で描かれた絵がありますが、特に
最後の人魚ひめが空に昇っていくことを表した絵は、気持ちのよい絵です。
海の上に帆船が浮かび、入道雲のように立ち上がった雲がいくつも浮かんで、
さらにその上に、自分がいるかのようです。

物語は、2作品ともアンデルセンの書いた「人魚姫」ですから、同じ物ですが、
「人魚姫」の方は、人間になる理由を王子と結婚したいと言うだけでなく、
さらにそのことによって、永遠の魂を得ることを、一番の目的にしています。
もちろん、「人魚ひめ」でも、同じ事が書かれていますが、永遠の魂については、
それほど固執した書き方ではありません。

この物語は、読み直して、何と切なく悲しい物語だったのかと、今さながら
驚きました。他の人に理解し、受け入れてもらえないと言うアンデルセン自身の
気持ちを、人魚姫に反映させたのでしょうか。
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