「絵本西遊記」 太田 大八・画 / 呉 承恩・作 / 周 鋭・編 / 中 由美子・訳 童心社
お馴染みの西遊記です。孫悟空が大活躍の中国の古典です。
私も子供の頃に、子供用の西遊記を読んだ覚えはあるのですが、覚えているのは孫悟空が、
岩山に閉じ込められていた箇所くらいです。
今回、絵本のため、あらすじプラスくらいの文章なのですが、読み出したらおもしろくて、
中国の古典はやっぱり面白いなと、改めて思いました。その西遊記の世界を太田大八が
描きたくて十数年機会を待っていたというだけに、一枚一枚の絵が場面の特徴を捉えて、
楽しめます。
なお、表紙は私が図書館から借りてきた物と違うので、たぶんですが、表紙とカバーの絵が
違うようです。図書館では、カバーの上からさらに透明なカバーを掛けてしまうので、中の
表紙は見えません。ここに表示した表紙とは、違うかもしれません。
「桐壺」 〔紫式部原作〕 / 畠中 光享・絵 / 石井 睦美・文 「京の絵本」刊行委員会
紫式部が書いた源氏物語の桐壺です。
「いづれの御時にか、 女御、更衣あまた さぶらひたまひけるなかに」ではじまる物語の第一帖です。
主人公の光源氏の出生の秘密?というほどの秘密ではないですが、生い立ちが書かれた章です。
その桐壺を絵本にしたものです。
文章は当然、現代語に訳されています。さらに、英語訳まで付いています。(こちらは、
ページの下に小さな活字なので、やや見難いですが。)
絵は、源氏物語絵巻を見ているような感じです。それも、少し時代がたったような、
古い絵の具の色をしています。
紫式部は文章だけで、源氏物語を書きましたが、後に絵巻物が描かれました。
その、現代版という感じです。
装丁なども凝っていて、見返しが和紙風の紙です。
この絵本は、94年刊のものを改定した99年版です。
「京の絵本」はシリーズで数冊出ています。図書館で見つけながら、こちらで紹介予定です。
「祇王・仏」 丹羽 貴子・絵 村中 李衣・文 「京の絵本」刊行委員会
上記の「京の絵本」シリーズです。
「平家物語」の中の、「祇王」と「仏」という白拍子のお話です。
悲しいお話で、権力者の身勝手さが、描かれています。
それにしても、わずか21歳、17歳で世を儚んで、出家するなど、私には
想像を超える世界です。
(おばさんになっても、未だに、うろちょろしているのですから)
昔は、たくさんの女性が権力を持った男たちに、翻弄され、涙を流して
いたのでしょうね・・・。
絵は美しく、美術集を見るようだと、評されています。
色使いなど、とても素敵です。ただ、清盛が優しい感じに
描かれているような気がします。
「いぬねこ かさねがふち」
舟崎 克彦・文 / 橋本 淳子・絵 文渓堂
表紙画像はありませんが、bk1にリンクしています。
鶴屋南北の歌舞伎を犬猫に置き換えて、絵本にしたものです。
ただし、私は『真景累ヶ淵』を良く知らないので、どのあたりが、この絵本に当たるのかまでは、
よく分かりませんでした。
『真景累ヶ淵』は、実話で茨城県常総市羽生町の法蔵寺裏手辺りの鬼怒川沿岸らしいと言われています。
親子3代に亘って子殺し、妻殺しが行われ、それを南北が歌舞伎に、円朝が落語にしたものです。
絵本は犬猫に置き換わっていますが、とても怖いです。
幽霊が出てくる怖いお話ではないのですが、人間の業(姿が犬猫であるに過ぎないので)の
怖さが、ひしひしと迫ってきます。明るい昼間に読むのをお勧めします。
簡単に内容を。
ねこのおみけが、大店の息子けんしろうに恋をして、いぬの子を産む約束で、晴れて夫婦に
なります。ところが、生まれてくる子は、ねこばかり。おみけは死産と偽って、子どもを
累ヶ淵に捨てました。4人目は犬だったにも拘らず、捨ててしまいます。それを見ていた
けんしろうがおみけを鎌で殺す、と言う物語です。
鎌が『真景累ヶ淵』でも、凶器として度々登場するようです。
橋本淳子の絵は、犬猫が登場人物ですが、違和感無く顔だけが動物です。
おみけが子を抱く姿、累ヶ淵に子を捨てる場面など、猫だからよけい怖いとも思えます。
おみけをねこ、けんしろうを犬にした理由がわかるような気がします。
犬猫が登場人物なんて、と思うことなく、しっとりとした日本の古典を読む気分を
十分に味わえます。
「鬼の首引き」 岩城 範枝・文 / 井上 洋介・絵 福音館書店
狂言の「首引き」を下敷きにして書かれたお話で、
鬼の娘による、人間のお食い初め、というお話です。
結局、鬼の娘に食われそうになった若者は、助かりますが、その様子を、順々に描いていった
ものです。
「首引き」という力比べで、鬼を負かすのですが、首引きという遊びは、実際に昔は行われた
ようです。
絵の雰囲気は、昔話風ですっとお話の中に入り込めます。
「ペローのろばの皮」
シャルル・ペロー原作 / エリック・バトゥー絵 / ジャン=ピエール・ケルロック文 / 石津 ちひろ・訳 講談社
ペローの「ろばの皮」です。ろばの皮を被った王女様のお話です。
なぜ、ろばの皮を被っているのか。その訳は、怖いです。
とても愛し合っていた王様とお后様がいましたが、お后様が病気で亡くなります。
お后様は、最後に、自分より美しい人と出会わない限り、再婚しないで欲しいと、願います。
王様は、もちろんと約束します。
でも、お后様が亡くなってしまうと、王様は元気を無くし、再婚を勧められます。もちろん、
亡くなったお后様より美しい人はいないと、再婚する気はありませんでした。ところが、王様は、
ある日、お城の庭で、愛するお后様とそっくりの美しい人を見つけます。そして、その人と再婚
すると宣言しました。それは、自分の娘、王女様でした。
お后様の娘でもあり、王様の娘でもある王女様は、お后様にそっくりでした。
王様は、亡きお后様との約束どおり、より美しい人を見つけたので、結婚すると言うのです。
困った王女様は、名付け親の仙女の助言により、ろばの皮を被って、ある農場で働く事にします。
そこで、王女様はある国の王子様と知り合い、めでたく結婚するというお話です。
結婚式には、王女様の父親の王様も招かれますが、その時には、素直に娘を祝福します。
バトゥーの絵は、赤と青が印象的にいつも使われています。この絵本でも、同じです。
そして、もう一つの特徴、この絵本では特に、背景を大きく取り絵の中に広がりを持たせています。
「ペローの青ひげ」 シャルル・ペロー文 / エリック・バトゥー絵 / 池田 香代子・訳 講談社
上記の絵本と同じく、ペローのお話です。
「青ひげ」と呼ばれる人物に嫁いだ女性のお話です。
昔、「青ひげ」というたいそうお金持ちの男が、いました。青ひげはお隣の家の、ふたりの娘さん
のどちらかを、妻にしたいと申し出ます。二人とも最初は、嫌がりましたが、次第に末娘がきちんと
した人なのだと思うようになり、結婚します。
でも、青ひげはすでに何人かの女性と結婚していて、その人たちはどこへ行ったのか、
誰も知りませんでした。
ある日、青ひげは出かけるので、妻になった娘に家中の鍵を渡します。
「どこを使ってもいいが、下の廊下にある小さな部屋だけは、開けてはならない」と、言い渡します。
さて、青ひげが出かけると、当然開けてはいけない部屋が気になります。
妻は、その部屋の鍵を開け中を覗きました。なんと、今までの奥方が、殺されて吊るされていたのです。
逃げようとした妻は、青ひげに捕まりますが、兄弟に助けられます。そして、青ひげの残した
財産で、妻は幸せになるのです。
怖いお話ですが、やはり人間は、だめと禁止されると、破りたくなるんですね。
特に、昔話は、「覗いてはだめ」は、「覗く事」とイコールです。
最後に教訓が二つ付いています。「好奇心は危険であること」「亭主関白は昔のこと」
ペローは、17世紀の人ですが、この時代ですでに、以上の教訓です。(^o^)
「虫めづる姫ぎみ」 森山 京・文 / 村上 豊・絵 ポプラ社
この絵本は、古典の「堤中納言物語」から、作られています。
「堤中納言物語」は10篇の短編物語集で、平安時代の後期に成立しました。
堤中納言が、書いたように思われますが、作者は10篇とも別々で、作者が判っているものは、
一遍だけだそうです。この「虫めづる姫ぎみ」も作者不詳です。でも、この「堤中納言」の中では、
特に面白いお話ということで、学校の授業などでも、聞いたことがあるのではないでしょうか。
平安時代の貴族のお姫さまは、人前に出ることがなく、たとえ人前にでても緋扇で顔を隠すなど
したものです。ところが、このお姫さまは、虫が大好き、しかも毛虫が、という変わり者です。
大好きな毛虫を取る為に、平気で庭に出たりして、近所の男の子を使って虫取りに興じます。
でも、なぜ、毛虫が好きなのか、「物事は本質を知らなければならない。だから、
原因と結果を知る事こそ大事。毛虫が蝶になることを見るのは、とても面白い。」
という、まるで、自然科学者の様なお姫さまなのです。
現代ならば、きっと著名な学者になっていたでしょうね。
そんなお姫さまですから、、毛虫の観察の方が面白くて、お化粧もしません。
眉もそらず、お歯黒もしない、今で言えば、茶髪もしない、ピアスもしない、って
ところでしょうか。
ところが、こんなお姫さまでも、逢ってみたいと心寄せる男性が現れます。
このお姫さまは、大納言家の姫さまなので、結構位の高いお家柄です。
その男性は、公達ですが位は下。どのように逢いにいけばよいか、思案します。
そこで、一騒動あるのですが、結局は、お姫さまを盗み見て、美しいとは思うけれど、
最後の声を掛けるところまでは、いきません。
見る目がないのです。この公達に!!
私はそう思います。
ユニークなお姫さまの様子、是非覗いてください。
村上豊の絵は、とてもかわいいお姫さまです。絵巻物風の絵も雰囲気がいいです。
「白鳥の湖」 ピョートル・チャイコフスキー原作
リスベート・ツヴェルガー再話と絵 / 池田 香代子・訳 ノルドズッド・ジャパン
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もともとチャイコフスキーが作曲した時は、最後はハッピーエンドでした。
悪に対する愛の勝利をうたいあげたものでした。しかし、初演が不評でその後改変され
王子とオデットがともに死んでしまうという、悲劇になりました。
(現在は、ハッピーエンド版もあるそうです。)
ツヴェルガーは、チャイコフスキーの意を汲んで、ハッピーエンドにしたのではなく、
自身がこの物語に納得できないでいたため、最後はハッピーエンドにしました。
このあたりの気持ちは、最後に「あとがき」として書かれています。
ツヴェルガーの絵は、いつもながら落ち着いた大人の絵です。色合いもシックです。
時代をいつに設定したかは書かれていませんが、大昔風ではありません。女性のドレス、
王子の服装など、20世紀初頭か現代かという感じです。
2ページ見開きで左に文章、右に絵です。左の文章の上には、楽譜が装飾的に
描かれています。それぞれの場面の楽譜かと、思いますが?
(「白鳥の湖」をそれほどは知らないので、当て推量です)