ファンタジーランド     絵本館Top

ファンタジーをこちらへ集めました。
ただし、私がファンタジーと思うものということで、
解説書などとは、違っているかもしれません。
また、児童文学にはこだわらずにこのリストだけは、
制作しています。


「鬼の橋」
「えんの松原」
「狐笛のかなた」
「ぼくの稲荷山戦記」
「夜の神話」
「裏庭」
「指輪物語」
「メメント・モーリ」
「ナシスの塔の物語」
「くらのかみ」 
「ギフト」 
「僕僕先生」
「しゃばけ」


「鬼の橋」 伊藤遊    太田大八・絵   福音館書店  オンライン書店ビーケーワン:鬼の橋

平安時代に実在した、小野たかむらの子ども時代のお話です。
陰陽師安倍清明が、流行っていますが、小野たかむらも、
よく似た話が伝わっています。
この本の中では、異母妹を死なせてしまったのは、自分の責任だという
思いが、他の登場人物の思いと重なっていきます。
死しても都を守る征夷大将軍坂上田村麻呂、孤児の少女、角を失った鬼、
皆切なさを抱いて、生きて?います。

子どもの時から、ファンタジーが大好きですが、日本の古代を取り上げた物は、
あまりなかったので、最近になって伊藤遊を知り、上橋菜穂子を知り、
たつみや章を知り、楽しみが増えました。
歴史が好きな方は、是非ご一読下さい。
図書館でも、本屋さんでも、小学校高学年用として置いてありますが、
これは、便宜上です。
大人の鑑賞に充分堪えられます。



「えんの松原」 伊藤遊  太田大八・絵  福音館書店 オンライン書店ビーケーワン:えんの松原

この本も平安時代のお話です。
理由あって女装をして、宮中に居る少年と、
東宮が出会います。
宮のすぐそばに、えんの松原と呼ばれる、昼なお暗い松原があります。
文字通り、怨を持ったモノタチが集まっているのです。
少年と東宮は、自らを生かすためにも、このえんの松原に挑みます。
でも、所謂、物の怪退治の大冒険とは違い、自分を見つめ、物の怪を
見つめ、世の中を見つめます。
優しく見守る、脇の伴内侍も素敵です。



「狐笛のかなた」 上橋菜穂子   理論社 オンライン書店ビーケーワン:狐笛のかなた

このお話は、伊藤遊より、さらにファンタジー色が強いようです。
物の怪、鬼、幽霊などは、もしかしたら、そこに、居るかもしれないけど、
使い魔なんていう狐がいて、人間に化けているなんて、ちょっと、考えられませんから。
でも、読み始めると、そんな現実は忘れて、夢中になってしまいます。
そして、何より小夜(聞き耳という他人の心を読む力を持っている)、
野火(使い魔と呼ばれる霊狐)の二人には、泣かされます。
切なくて、哀しくて。
物語の舞台は、戦国時代風で、架空の湯来ノ国と春名ノ国。
この二国が、親の代からの水源地、若桜野の領土争いをしています。
その争いに、小夜、野火、そしてもう一人、領主の息子、小春丸の3人が、
巻き込まれていきます。
お話に出てくる情景は、春のやわらかさなどを、自然に感じさせてくれます。



「ぼくの・稲荷山戦記」  たつみや章   講談社


上記の二人より、やや、子ども向きの感じがしますが、
(最初から、すべて児童文学なので、当然といえば当然ですが)
たまには、こんな本も楽しいです。
裏の稲荷山のレジャー開発に絡んだ、主人公と、お稲荷さんの
使いの狐のお話です。
といっても、こちらは、現代が舞台だけに、切なさ、とはちょっと遠いです。
信仰というか、不思議を信じることを思い出させてくれます。



「夜の神話」   たつみや章  講談社

原子力発電所が舞台になります。
児童文学には、珍しく登場人物が亡くなってしまいます。
といっても、幽霊になってその後登場しますが。
なくなる原因は、原子力です。
青い光に包まれるようにして、生がなくなっていくのです。
とても重要な事について、分かり易く気付かせてくれます。



「裏庭」 梨木香歩  新潮社 オンライン書店ビーケーワン:裏庭

「丘の麓のバーンズ屋敷に何か秘密があることは、
当時その辺りの子どもなら誰でも知っていた。」
という、文で始まります。
いかにも、何か、秘密めいていて、わくわくするような
冒頭です。

主人公は、照美という女の子で、物語が進むにつれて、
名前にも意味があることが、分かります。
バーンズ屋敷の裏庭が、問題の庭ですが、
普通の人には、入れない庭、というと、「秘密の花園」
をちょっと思い出させます。
でも、この裏庭はもっと、とんでもない物です。
照美が、裏庭を冒険することは、ご想像どおりです。

照美は、双子の弟が死んだのは、自分の責任で、
そのことで、両親は自分に冷たくなったと、
思っています。照美のママは、子どもの頃、
照美と同じ思いをしています。
物語の最後に、和解と、理解と、魂の解放が、
照美の家族皆に訪れます。



新版 指輪物語〈1〉/旅の仲間〈上〉
J.R.R.トールキン  瀬田貞二・田中明子/訳 評論社          

映画になって、とても有名になりました。
ホビット、ガンダルフ、エルフ、など、
一度は耳にした方も多いでしょう。
映画は、とても忠実に作られていて、
興味のない人は、飽きてしまうくらい
では、と思います。

お話は、ホビットのフロドが、ガンダルフに促され、
世界を統べる指輪を、モルドールへ、捨てにいく
旅、全6巻という長い物語です。
旅の仲間が助け合い、善なる者達が、
悪に立ち向かう、幾多の試練を乗り越え、
得る物が、宝物ではない、冒険物語。

イギリスは、このトールキンをはじめ、
C.S.ルイス、ルイス・キャロル、などなど、
ファンタジーを書く作家が、たくさん出る国です。
それも、上質の。
ファンタジーは、ただのおとぎばなしでは、
ありません。物語の舞台を、想像上の世界に
おき、そこで活躍する主人公たちの、
魂の成長、解放などが、主題です。
ですから、これがないものについては、
正式なファンタジーとは、認められません。
(わたしは、認めません。_(^^;)ゞ

「メメント・モーリ」
 おのりえん 作  平出衛 絵  理論社 オンライン書店ビーケーワン:メメント・モーリ

「メメント・モーリ」とは、「死を忘れるな」。
常に死を意識し、生きることをいいます。
異界ファンタジーです。

主人公の名前は、「ほほ」女の子です。
読み始めてすぐに、「裏庭」に似ているな、
と思いました。
親との齟齬感、アイデンティティーの問題、
12歳の女の子には、やや、荷の重い気持ちでしょう。
でも、「裏庭」とは別な物語です。

時間が進むことを拒否しているモーリ王子の
物語です。物語が進むと、本当に時間が進むことを
拒否していたのは、誰なのかがはっきりします。
その気持ちが分かるので、切ないです。

登場人物、鬼のヨロイ、フローヒール、
ちょっと、子供用で残念なのは、絵が描いてあることです。
大人だったら、自分で想像して楽しむので。

冒険が終わっても、「ほほ」は、大きく変わりませんが、
確実に進んでいる、ということで、お話は終わります。
ほほは、大人に向かって、ほほの母(私もここに混ざります)は、
白髪が増えて。





「ナシスの塔の物語」 みおちづる   ポプラ社
オンライン書店ビーケーワン:ナシスの塔の物語
ナシスという、砂漠の中にある町が舞台です。
主人公は、パティーというパンのような食べ物を焼く、
パティー屋の息子です。名前をリュタといいます。

ナシスは砂漠の小さな町でした。ところが、ある日、
はぐるま屋がやってきて、はぐるまを皆が使い出し、
町が大きく発展していきます。
そして、もう一人の主要人物、トンビという、
町のはずれの丘に住む人物、はぐるま屋は、工場を
大きくするために、トンビを追い出そうとします。

追い出すための方法など、時代劇に出てきそうな
感じですが、何時の時代も、変わらないということでしょう。

発展と自然環境保護、何時の時代も、問題です。
すべてを否定すれば、人類の発展はなかったかもしれないし。
否定しなければ、自然に仕返しされることもないかもしれないし。

そして、何時の時代にも起きる父と子の問題。
やはり、父とは違う道を歩きたい、あるいは、
効率よく仕事をしたい、息子、若い世代は、
どうしても、そんな風に考えてしまいがちです。

物語は、とてもよく出来ています。
第10回椋鳩十児童文学賞を受賞しているそうです。


「くらのかみ」 
小野 不由美著  講談社 オンライン書店ビーケーワン:くらのかみ
小野不由美の作品は、「魔性の子」を読んで以来、大好きです。だから、この本も名前だけで、
早く読みたいと願っていました。で、よく探したら図書館の片隅においてあったのです。
なぜ、気が付かなかったかというと、本のカバーがなく、平凡な感じに並んでいたのです。
装丁の方は、ガッカリでしょうが、図書館ではカバーは例外なく外されていますので。

で、内容ですが、萩尾望都の「11人いる!」のシチュエーションです。まさに。
でも、こちらは複雑な遺産相続の問題、きっと大人向けならもっと手の込んだお話に
なるのでしょうが、やはり、ちょっと子供向けでした。
もう少し、「十二国」シリーズ並みの迫力が欲しいかな、という感じです。
だからといって、面白くないということはなく、それなりに楽しめます。


「ギフト」
  ル=グウィン著 / 谷垣 暁美・訳  河出書房新社 オンライン書店ビーケーワン:ギフト
とても面白かったです。「ゲド戦記」の作者の最新刊です。
ギフトという能力をもった一族が住む高地、「西のはて」の世界の辺境ともいうべき
場所です。ここに、強すぎる「ギフト」をもったために、父親から目を封印された少年オレック
がいます。幼なじみのグライという少女とともに、父からの独立の物語といえます。

「ギフト」は、文字通りの意味もあり、一方側の力を示すだけではない事が、語られています。
「均衡」を保つというル・グウィンの考え方でしょう。

派手な事件を起こしていく物語ではなく、グライとオレックの会話と、オレックの内省で、
進んでいきます。だからといって、退屈はしません。大人も十二分に楽しめます。
作品の力にぐいぐい引っ張られて、あっという間に読み終わってしまいます。


「僕僕先生」 仁木 英之・著  新潮社 オンライン書店ビーケーワン:僕僕先生
第18回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作品です。
ひとこと、「おもしろい」です。

仙人とのらりくらりと暮らしていた、今で言えばニート青年が、冒険して
互いに必要な人間であることを確認し、ニート青年が普通の働く青年に
なるお話です。といっても、結局は仙人に迎えられて、仙界へ行くようですが。

舞台は昔の中国です。役人を退職した父親の財産をあてにして、働かず、
毎日まったりと暮らしていた王弁は、ある日仙術に凝っている父の使いで
仙人のところへ出かけます。
その仙人は、大方の予想を裏切り美少女といういでたちで、「僕僕」と
名乗ります。ただ、美少女の姿だけでなく、仙人らしい?白髪の老人にも
なります。どちらが本体か、最終的にも明かされませんが、おそらく
美少女が本体と思わせます。

王弁は、仙人になる資格がないけれど、仙人と縁をつなぐ事ができる
体質と言う事で、「僕僕」と旅に出ます。もちろん、仙人との旅ですので、
普通の旅とは、ちょっと違うものでした。

やがて王弁は、「僕僕」を恋人のように思うようになりますが、「僕僕」の
側も、王弁は無くてはならぬ人と、考えます。この結びつきが、さまざまな
異界での冒険に繋がっていきます。

このおはなしを読むと、まったり暮らしているのが、どうしていけないかと
最初は思えます。やがて、それは悪い事と決め付けられませんが、やっぱり
人の役に立つことは、人として一番居心地が良いのだと、わかります。

できれば、次の「しゃばけ」シリーズのように、シリーズ化を望みます。


「しゃばけ」 畠中 恵・著  新潮社  オンライン書店ビーケーワン:しゃばけ
第13回ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作品です。
これも、「おもしろい」です。

「しゃばけ」とは「娑婆っ気」という意味だそうです。
妖怪に守られている病弱な若旦那のおはなしです。現在5巻出ています。

もともと祖母が大妖という若旦那は、毎日死に掛けています。それを守る為、
祖母が付けた手代の二人が、犬神と白沢という妖怪です。この他に、屏風覗き
家鳴り、などなどの妖怪の仲間が若旦那を助けて、難事件を解決します。

その話の中で、手代の二人は助さん格さんよろしく、ものすごく強いし、
さらにカッコイイし、なのに若旦那には、度が過ぎた過保護だし。
楽しめる要素がいっぱい詰まっています。


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