「はなさかじい」 松谷みよ子・文 瀬川康男・絵 フレーベル館
昔話といえば、まずは、花咲爺さんですね。
子供の頃にどなたも、一度ならず聞いたことがある思います。
でも、読んだ事は?
私も、久しぶりに読んでみました。
昔話は、お話によって細部が違うことが
良くあるのですが、この本も、裏の畑じゃなかったです。
犬のしろもどこから来たのか、初めて知ったような気がします。
瀬川康男の絵は、昔話風で、とてもいいです。
改めて読んで、得した気分です。
「みるなのくら」 おざわとしお・再話 赤羽末吉・画 福音館書店
少し古い本なので、現在も扱っているかどうか
心配でしたが、人気があるのでしょうか。
ちゃんと、ありました。
人間って、どして、見ちゃいけないものは、
見たいのでしょうね。
昔話は、いつも見てはいけないものを、見てしまいます。
でも、「みるなのくら」は、月ごとの行事の雰囲気が出て、
とても素敵です。
12番目を見るなと言われても、やっぱり無理ですね。
再話をした、「おざわとしお」は、小澤征爾氏のお兄さんです。
昔話の研究をなさっています。
「おに」 西本 鶏介・文 / 村上 幸一・絵 佼成出版社
この絵本は、「おに」というお話が書いてあるのではなく、昔話に出てくる
鬼について、書いたものです。
鬼は、大昔は山の神様で、自然の出来事はすべて山の神様のしわざと考えていた、
というところから、はじまります。やがて、天災などが起きると、悪い神様として考えられ
恐ろしい姿の鬼が誕生したのです。
鬼の特徴、鬼の仕事、鬼の嫌いな物、鬼を成敗した人、など鬼についての情報誌?です。
昔話に登場する鬼についての、基礎知識として読んでおくと、昔話がさらに面白くなるのでは。
「かじかびょうぶ」 川崎 大治・文 / 太田 大八・絵 童心社
なまけものの男が山や畑を売って、暮らしていました。
しかし次第に、たくさん持っていた土地も残り少なくなり、とうとう奥の山のかじかざわまで
売らなければならなくなります。ところが、かじかざわにいくと、かじかがえるの「とうりょう」
というおじいさんがやって来て、売らないで欲しいと頼まれます。
家に帰った男は何も描いてない枕屏風を売れば、まだ食つなげると思いかじかざわを売ることは
止めようと思います。その夜、男が寝ていると、枕元でザワザワと音がして、翌朝、屏風にみごとな
カジカ蛙の絵が描かれていました。その絵がすばらしいので、見物人や売ってほしいという人が、
たくさんやってきましたが、男はその日から、まじめに働きだし、やがて物持ちになります。
男は、食べられない村の者がいれば、食べ物をわけてやり、困っている者がいれば、知恵を貸す
などして、村の人からたいそうしたわれる人になっていきます。やがて、年をとり寝たきりに
なると、かじかびょうぶを力づくで取り上げようと、殿様の家来たちがやってきました。
そして、かじかびょうぶを持って行こうとすると、絵の中の蛙たちは、ザワザワと逃げ出して
行きました。
このおはなしは、川崎大治が伊豆で再話したものです。
太田大八の絵が、いかにも昔話風でとてもいいです。
「北の魔女ロウヒ」 バーバラ・クーニー絵 / トニ・デ・ゲレツ原文 / さくま ゆみこ・編訳
あすなろ書房
フィンランドの叙事詩「カレワラ」が原典です。
ロウヒという魔女が、月と太陽を隠してしまい、賢者ワイナモイネンと鍛冶屋が、それを
取り戻すという物語で、原典では邪な魔女ですが、いたずら好きな魔女とされています。
ちょっと、日本の天岩戸を思わせる闇夜ですが、フィンランドでは人間が取り戻した
ようです。おそらくは、日食、月食をこのように表したのでしょう。
クーニーの絵がとてもいいです。魔女ロウヒの目のらんらんと輝いている様子を
みると、いかにもいたずら好きな感じです。さらに、全体に叙事詩の雰囲気を漂わせ、
神話の世界を思わせます。
なお、文章は原文に、編訳のさくまゆみこが叙事詩「カレワラ」の原典も参考にして、
書いています。
「うしかたと山んば」 坪田 譲治・ぶん / 村上 豊・え ほるぷ出版
坪田譲治のお話を松谷みよ子が、絵本用に短くしたものです。
恐ろしい山んばに食べられそうになったうしかたの話で、日本の各地に似たような
お話はあります。恐ろしい山んばですが、村上豊の絵は、ややユーモラスです。
でも髪を振り乱した姿は、やっぱり山姥です。女の怖さなんかも出ているような気が・・・。
民話は、悪者は最後に退治されますが、いつもちょっぴり残酷で、かわいそうな気もします。
たいていは、人間がだまして退治するのですから。
「オニの生活図鑑」 ヒサ クニヒコ文・絵 国土社
昔話に良く登場するオニの様子を、細かく調べた図鑑です。
同様に、「カッパの生活図鑑」「テングの生活図鑑」があります。
3冊とも、今は滅んでしまった、「オニ族」「カッパ族」「テング族」について、
描かれています。
もちろん、実際に「オニ」「カッパ」「テング」がいたわけではないのですが、
その生活の様子、食べ物、住まい、などなど、細かく描かれ、作者の気持ちが、
良く伝わってくる絵本です。
これらが、滅んでしまった理由などは、もっともらしく書かれ、まるで、学術書の
趣です。
絵も細かく、一つ一つが実際見てきたのかしらと、感じるほどです。
特に、それぞれの住まいの様子が特徴を持って描かれ、こんな場所を見つけたら、
さぞ、楽しいだろうなと想像します。
動物や、人間の種族が滅ぶとは、どういうことか、考えさせる記述も、随所に
見られます。それを主目的に描いたものではありませんが、期せずして、考えます。
小さな子どもたちも、自然に感じるように、描かれています。
「きつねにょうぼう」 長谷川 摂子・再話 / 片山 健・絵 福音館書店
「再話」とあるとおり、昔話の再話です。
題名から想像される通りのお話が展開されます。
ある男の所に、旅の美しい娘が、宿を求めやがて嫁になります。
そして、子どもが産まれ幸せに暮らしていましたが、子どもが母が、きつねのしっぽを
出しているのを見てしまいます。すると、一緒にいることはできないと、山に帰ってしまいます。
その後、田植えを暗いうちに、きつねにょうぼうがひとりで行い、その年の米は、大豊作で残された
二人は、風邪も引かず元気に暮らしたと言うお話です。
絵はこのお話に命を与えたようで、物語の雰囲気がよく伝わります。
「かなしみのたたかい」
ハミド・レザ・ベイダーギー作・絵 / おおいし まりこ・訳 新世研
イランの伝説です。
ペルシャで一番の戦士ロスタム、その隣国のトーランで一番の戦士ソラブが戦います。
でも、この二人は親子だったのです。それを二人は知らずに戦い、父ロスタムは息子のソラブを
殺してしまいます。
なぜ、親子と知らずに戦う事になったか。
ロスタムは、若い頃、トーランで馬盗人に遭い、それを取り戻しに行った時に、
トーランの王様に気に入られ、姫のターミネと結婚しました。そして、子どもが生まれると言う時に、
ペルシャに戦のため、呼び戻されました。ロスタムは、子どもが生まれたらつけてほしいと、宝石の
ベルトを姫に渡していました。
やがて、生まれた子どもがソラブでした。時が過ぎても、戦は終わらず、ロスタムは、姫と子どもの
所へ戻ることが出来ませんでした。
ソラブは、王の孫として様々な武術を身に付けて、一番の戦士になりました。でも、父にその姿を
見てほしいと思っても、かえって来る様子はありません。そこで、ペルシャをトーランが併合すれば、
父親とも逢えるのじゃないかと、考えます。
トーランの王も領土の拡大には大賛成でした。こうして、軍隊を連れて、ソラブは、ペルシャに
向かったのです。
そして、悲劇が起きました。取り返しの付かない悲劇が。
「ヤンメイズとりゅう」
松居 直 / 関野 喜久子・再話 譚 小勇・絵 福音館書店
表紙画像ありませんが、bk1にリンクしています。
中国の昔話を、日本人の二人が再話し、中国の作家が絵を描いたものです。
シャオホンメイという女の子が龍にさらわれます。シャオホンメイは、自分を助ける事が出来るのは、
弟だけだと、言い残します。でも、母とシャオホンメイの二人暮しで、弟はいません。
母は、悲しみますが、ふと見たヤマモモの実を、食べます。すると不思議に、男の子が生まれます。
どこか、桃太郎に通じるような、展開です。昔話に、桃は若返りとか、魔よけと言われ、
登場します。ヤマモモも同じような理由かもしれません。
男の子は、ヤマモモの子「ヤンメイズ」と名づけられます。
ヤンメイズは、やがて、お姉さんを助けに出かけます。その途中で、蛇やカエルが踊りだす
笙を手に入れます。龍とであったヤンメイズは、この笙で、龍を懲らしめます。池に潜って
二度と悪さをしないように、約束させます。が、龍は再び現れ、襲い掛かります。
この時、姉のシャオホンメイは、悪い物は息の根を止めなければならないと、弟を諭します。
ヤンメイズは、笙によって、龍を退治し、二人は龍の屍骸をもって、家に帰ります。
龍の屍骸は、家を作りなおすために使い、さらに農作業用の鋤になり、三人は幸せに暮らしました。
絵は、好感の持てるかわいらしさと、勇ましさを併せ持っています。
色使いも美しく、中国の墨絵に色付けした感じです。
最後に、やはり男は甘く、女は逞しいと、思います。
「うるわしのセモリナ・セモリナス」
アンソニー・L.マンナ再話 / クリストドウラ・ミタキドウ再話 / ジゼル・ポター絵 / きむら ゆりこ訳 BL出版
絵の感じは、モダンな現代的なお話のイメージですが、ギリシャ民話です。
ギリシャのアレティ姫が、気に入った恋人がいなくて、自分で作りました。アーモンドとさとうと
セモリナ粉で、粉人形を作り、40日神様にお祈りして、理想の恋人を作ります。
普通の人の5倍も美しく、10倍も優しい人です。アレティ姫じゃなくても、うっとりです。
ある日、はるか遠い国の女王が「うるわしのセモリナ・セモリナスさま」の噂を聞いて、
家来に連れてくるように、命じました。女王の家来は、命じられるまま、ギリシャから、
「うるわしのセモリナ・セモリナスさま」を連れてきてしまいます。
アレティ姫は、「うるわしのセモリナ・セモリナスさま」を連れ戻す為に、旅に出ます。
途中、月の親子、お日様の親子、星の親子に助けられます。
やがて、「うるわしのセモリナ・セモリナスさま」を見つけ、月、お日様、星の親子にもらった、
宝物で、無事に助け出す事が出来ました。
遠い国の女王は、「うるわしのセモリナ・セモリナスさま」と同じように、自分で恋人を
作ろうと思いますが、粉人形のために、お祈りしようとしても、のろいの言葉しか出ずに、
粉人形は、腐ってしまいました。
民話ですが、絵はとてもモダンで、色使いもシックな大人の感じです。
「うるわしのセモリナ・セモリナスさま」がとても、優しく美しく、遠い国の女王は、
意地悪な雰囲気が、よく出ています。
「ほしになったりゅうのきば」 君島 久子・再話 / 赤羽 末吉・画 福音館書店
中国民話を再話したものです。
子どものいないおじいさんとおばあさんに、ある日子どもが授かります。
山の上から大きな岩が落ちてきて、その中から元気な男の子が生まれます。名前はサン(英雄)と
名づけられます。サンはりっぱな若者になり、おじいさんとおばあさんと楽しい日を送って
いました。
ところが、ある日、南と北の龍が喧嘩をして、天に裂け目を作ってしまい、村は毎日雨ばかり
降り、作物も取れず、村人は山の洞穴に隠れました。やがて、サンは天の裂け目を繕うために、
出かけていきます。物知りのひげの老人から、ウリュー山のクマ王の娘が、繕い物が上手だと
聞いて、娘に天の裂け目を縫ってもらおうと、出かけます。
クマ王の三番目の娘が、サンと一緒に天へ登って、裂け目を繕ってくれることになりましたが、
そのために、龍の牙が必要でした。サンは、天の裂け目を作った龍の元に行き、牙を抜きます。
その牙を手に、二人は翼のある羊に乗って、天へ向かいます。
冷たく吹き付ける雨風に負けぬように、二人は天を繕います。やがて、サンの村の為の繕いは
終わりますが、天は裂け目だらけで、二人は今でも繕っているのです。
地上では、村の人が空を見上げ、白く輝く龍の牙を星と、娘が広げたターバンを銀河と
呼ぶようになりました。
サンと娘が今でも天で繕っている事に、感動してしまいました。
最後のこの数ページは、素敵です。
絵も、具体的な感じから、後半は抽象的な感じに変わりますが、想像する幅が広がるので、
気持ちも広がっていく感じです。
「セルコ」 内田 莉莎子・文 / ワレンチン・ゴルディチューク・絵 福音館書店
ウクライナの昔話です。
セルコというのは、犬の名前です。このセルコが、年を取ったので飼い主から追い出される
ことから、このお話は始まります。
追い出されたセルコが、おおかみに出会います。おおかみは、セルコが追い出されたと聞くと、
また、家に帰れるようにしてやろうと、相談を持ちかけます。
おおかみが、農作業に忙しい主人夫婦の子どもをさらうので、セルコがそれを連れ戻すという、
作戦でした。作戦は上手くいき、主人は、またセルコを大事に飼う事にしました。
ここまでは、「泣いた赤おに」に似た展開です。でも、後半、セルコはおおかみにお礼を
しようと考えます。
主人夫婦のところで、結婚のお祝いが行われる事になり、セルコはそっとおおかみに
ご馳走しようと考え、おおかみに夜になったら、そっと来るように誘います。
おおかみは、夜になってやってきますが、家中飲めや歌えの大騒ぎで、テーブルの下に
隠れて、ご馳走を食べるおおかみに気付く者はいませんでした。
ところが、ご馳走を食べて気分がよくなったおおかみは、大声で歌いだしました。
お客さんはびっくり、セルコはぐいぐいとおおかみを外へ連れ出します。
野原まで逃げてくると、「この間のお礼ができた。げんきでな」と、二人は抱き合い、
別れました。
絵は細かく描かれ、色合いも美しいです。セルコとおおかみの表情も、とても良いです。
「さんねん峠」 李 錦玉・作 / 朴 民宜・ 絵岩崎書店
朝鮮の昔話です。
あるところに、さんねん峠と呼ばれる峠がありました。あまり高くなく、なだらかな峠です。
でも、この峠で転ぶと、3年しか生きられないと言われていました。
そのため、人々は峠を越える時は、慎重に転ばないようにと、気をつけていました。
ある年の秋、おじいさんは反物を売った帰り道、さんねん峠で一休みします。
さんねん峠はとても美しい所です。おじいさんは、うっとりと眺め、つい時間を
過ごしてしまい、日が暮れかかりました。慌てたおじいさんは、急いで峠を下りようと、
しました。暗くなれば転ぶかもしれませんから。
でも、おじいさんは慎重に歩いていたのに、転んでしまいます。
おじいさんは、家に帰り着くと、泣いておばあさんに訴えました。
「わしはもう、3年しか生きられない、どうしよう」と。
その日からおじいさんは、寝付いてしまいました。
おばあさんは、つきっきりで看病するのですが、ますます重くなるばかりです。
村の人も心配しましたが、そんなある日、水車やのトルトリが見舞いに来ます。
そして、おじいさんに病気の治る方法を教えます。それは、もう一度、さんねん峠で
転ぶと言う方法でした。
とんでもないと言うおじいさんに、トルトリは説明します。
「さんねんで峠転べば3年生きられるから、二度転べば6年生きられる、三度転べば9年」
というように、何度も転べば、むしろ長生きできると、話します。
喜んだおじいさんは、早速、さんねん峠に行って、何度も転びました。
すると、ぬるでの木の陰から、面白い歌が聞えてきます。
「いっぺん転べば、三年で、十ぺん転べば三十年、百ぺん転べば三百年
こけて ころんで ひざついて しりもちついて でんぐりがえり
ながいきするとは こりゃめでたい」
もちろん、トルトリが歌っていたのです。
その後、おじいさんはすっかり元気になりました。
水車屋のトルトリの優しさが、うれしいお話です。
絵は、とてもやさしげで、誰もがニコニコしたくなるような感じです。
絵本の中で、おばあさんは、おじいさんが病気になっても落ち着いて、
笑顔でした。やっぱり女性は強い、ですね。
「まほうのたいこ」 うちだ りさこ・ぶん / シェイマ・ソイダン・え 福音館書店
シベリアの昔話ですが、文は「うちだりさこ」が書いてます。
ある村に、おじいさんとおばあさんと、暮らしている女の子がいました。
ある日、女の子は、友達とツンドラへ食べられる草の根を取りに行って
迷子になってしまいます。でも、不思議な女の人に助けられ、一緒に暮らします。
やがて、女の子は家が恋しくなり、女の人に家まで送ってもらう事になります。
その時、女の人は、自分はこれから春まで眠るので、その前に送っていって
あげると言います。そして、女の子に太鼓をたたきながら踊りを見せ、その太鼓を
祭りにその通りに踊るように教え、渡します。
女の子が無事に戻ったのことを、お祝いしてたくさんの人が集まり、祭りが
行われますが、その場で女の子が太鼓をたたき、踊ると、たくさんの海草、木苺などが
でてきます。そして、女の子は村一番の、人気者になります。
絵はトルコの人です。やさしい色使いの絵です。見開き2ページが一場面になっています。
ページ全体塗りつぶさず、白い部分を残し、絵に軽さを持たせた感じです。
「モンゴルの黒い髪」 バーサンスレン・ボロルマー絵・文 / 長野 ヒデ・訳 石風社
モンゴルの民話を元に、作者の創作も取り混ぜたものです。
モンゴルの伝統的な文化、習慣を作品を通して紹介しています。
モンゴルの女性の髪型についての伝説的物語です。
むかし、モンゴルへ攻め入ろうとした悪者がいました。カササギがそれを知らせ、
男たちは、悪者を追い払う為に、出かけます。でも、残された女性と子どもをどのように
守ったらよいかと、考えました。村には、邪悪なカラスが差し向けられていたのです。
女性たちは、長い黒髪を大きい鳥の羽に見立てて、邪悪なカラスを追い払おうと、
考えました。長い黒髪を二つに結い、カラスより大きな翼に見せかけました。
このために、邪悪なカラスは追い払う事ができ、男たちも敵を追い払い帰って
来ました。
「はちみついろのうま」 小風 さち・作 / オリガ・ヤクトーヴィチ・絵 福音館書店
Amazon
民話風なお話ですが、日本の作家が創作したもののようです。ただ、ウクライナか、
ロシアの民話を下敷きにしたのではないかと、思わせます。
絵は、キエフ在住の女性の作家です。繊細な美しい絵を描きます。
昔、若い鍛冶屋とむすめの結婚が決まりました。若い鍛冶屋は隣村に住んでいます。
娘は、若い鍛冶屋にキノコのスープと、木苺のジャムを作って届けるために、
キノコと木苺を摘みに、林に出かけました。ところが、林にはキノコも木苺もなく、
次第に入ってはいけないと言われた森に入っていきました。
森には、おにばばが住んでいて、娘はおにばばに捕まり、馬にされてしまいます。
馬になった娘は、若い鍛冶屋に助けてもらおうと、知恵を働かせ、鍛冶屋に出かける
ように、おにばばを促します。
やがて若い鍛冶屋は、馬が娘だと気付き、むずめを助ける為に、おにばばを小屋ごと、
燃やしてしまいました。
こうして、娘は助かり、若い鍛冶屋と結婚しました。
このお話の中で、娘の一家の靴、おにばばの靴は草の蔓か、木の皮で編んだようなもの
ですが、鍛冶屋一家の靴は、革靴のようです。貧富の差なのか、村ごとの習俗の違いな
のか、興味のあるところです。
絵は、派手な色は使われていませんが、繊細にしっかりと描かれています。
背景は暗い森の中でも、あまり黒くなく白を基調にしています。
「王さまと九人のきょうだい」 君島 久子・訳 / 赤羽 末吉・絵 岩波書店
これぞ、昔話と言う感じのお話です。
子どものない年寄り夫婦に、神様が九人の子どもを授けます。そして、この九人のきょうだいが
協力して、王様を懲らしめるというものです。
このおはなしは、中国の少数民族イ族の昔話です。イ族は、大きく二つに分けることができ、
征服者の「黒イ」被征服者の「白イ」です。このお話は、「白イ」に伝わっているものです。
「白イ」は、奴隷階級としてその暮らしぶりは、大変に悲惨なものでした。その「白イ」が、
支配者の王さまを懲らしめる話を伝えてきたということが、お話の背景には欠かせないと、
解説にあります。
また、この話の類似したものが、中国各地にありますが、この「イ族」に伝わったものが、
一番面白いそうです。
絵は、赤羽末吉のいつもどおりの安心感のある昔話の絵です。この作家の絵は、古臭さを感じさせない
昔からの絵という趣です。王さまの表情、構図の取りかたなど、楽しめます。
「かえるの王さま」 グリム〔原作〕 / ビネッテ・シュレーダー絵 / 矢川 澄子・訳 岩波書店
グリム童話です。
題名からの想像通りのお話でした。ただ、少し納得できないところがあります。
大抵は、お姫さまはどんな怪物でも、醜い動物でも嫌がらず、受け入れて最後に、
でもそれは悪い魔法使いに魔法をかけられた王子様でした、ですが・・・。
お姫様が森の中の泉で、落としてしまった金のまりを拾ってきたら、お姫さまの
遊び相手にしてほしいと、かえるが頼みます。すると、お姫さまは承知するのですが、
内心「おばかなかえるさん、かえるは水の中でケロケロいってりゃいいんだわ。
人間のともだちになれるもんですか」と、まりをもらうと、帰ってしまいます。
翌日、かえるはお城にやってきて、戸口をたたきます。
お姫さまは、すぐに閉めてしまいますが、王様は理由を聞くと「約束は守れ」と
かえるを中に入れます。そして、お姫さまの部屋へもかえるはいきますが、
そこでも、壁にぶつけられたり、かなり邪険にされます。
そして、のろいが解けて、王子様になるといそいそとお姫さまは、王子様と
結婚します。なんか、納得できないです。この邪険にする役は、普通別なお姫さまで、
主人公のお姫さまは、優しくて、かえるでも愛して、それでのろいが解ける、
がパターンのような気がするのですが。
いえ、パターンじゃなくても、こんな意地悪なお姫さまが、王子様と結婚する
ということが、理不尽です。何となくね。
とはいえ、絵が素晴らしいです。この絵に引かれて、借りてきました。
どこか、異空間を思わせる感じで、神秘的です。不思議な感じの遠近感で、
ずっと奥はとても奥に見えます。森に入っていくお姫さまのシーンは、
そのまま森に吸い込まれてしまいそうです。ちょっと、怖い感じもします。
断ち切りの2ページ見開きで一枚の絵ですが、中にはコマワリのようにして、
動きを感じさせる絵もあります。
最後に、このお話は「または忠臣ハインリヒ」といいます。
かえるにされた王子様を探して、鉄の輪を胸に嵌めたハインリヒが、
馬車で迎えに来るのです。
「白雪姫」 高津 美保子・文 / 山本 容子・絵 ほるぷ出版
お話は、グリムの白雪姫とほぼ同じですが、作者のあとがきによると
色々伝えられている白雪姫のお話を参考に、自分の白雪姫を書いたものだそうです。
しかし、この絵本の一番の特徴は、絵です。山本容子は銅版画で有名です。銅版画による絵本も
何冊も出しています。山本容子の銅版画がお好きな方は、受け入れやすいですが、どうもちょっと、
という方は、首を傾げるかもしれません。
また、装丁の問題にもなりますが、文字がやはり銅版画か、それに似せた手書きの文字です。
ユニークな感じです。
一枚、一枚の絵が、山本容子の作品のようになっていますので、その意味でお楽しみの絵本です。
「三つのオレンジ」 剣持 弘子・文 / 小西 英子・絵 偕成社
イタリアの代表的民話です。
副題に「ミルクのように白く血のように赤い娘」とあります。
昔、トスカーナ地方の王子さまが、リコッタチーズの上に過って自分の血を落とします。
すると、「なんて、きれいなんだろう、白くて赤いこんなきれいな娘がいたら、すぐにも
結婚したいものだ。ぜひともさがしに行こう」といって、出かけます。
お話は、昔話風に魔法使いが出てきて、手助けしてくれ、無事に願いどおりの娘と結婚
します。でも、それをねたんだ魔女が結婚した娘をツバメに変えて、ひと波乱あります。
もちろん、最後はめでたし、めでたしです。
昔話といっても、やはりイタリア的ですね。リコッタチーズなんて、日本じゃ考えられません。
それに、美しい女性を見たら、待ちきれない王子様とか、美しい姿が自分じゃなかった事に
腹を立てる魔女など、ラテン民族ですね。
画家は、日本画家ですが、ルネサンス美術に興味を持ち、トスカーナ地方に何度も足を運んで
いるので、雰囲気がよく出ています。また、日本画ということでしょうか、清楚な華やかさがあり
絵が美しく、大判の絵本なので、読んで見て、楽しめます。
「あいててて!」 グリム原作
ナタリー・バビット再話 フレッド・マルチェリーノ絵 せな あいこ訳 評論社
グリム童話をナタリー・バビットが、再話したもので、
マルチェリーノの絵とともに、昔話にユーモアをたっぷり入れたものです。
物語は、「あくまの3ほんの金のかみの毛」と、普通は訳されているものです。
あるところに生まれた男の子の赤ちゃんに、「王冠もようのあざ」がありました。
そして、それは大きくなったらお姫さまと結婚する印だと、占い師が予言します。
ところが、これを聞いた王様が、「そんなつまらない男と結婚するなんて、
とんでもない」と、その男の子を殺そうとします。
その男の子を箱に入れ、川に流しますが、粉屋に拾われマルコと名づけられ、
無事に大きくなります。それを知った王さまが、今度は「この男を殺すように」
と書いた手紙を持たせ、お城へ使いに出します。でも、途中で盗人一味が手紙を
書き換えてしまい、お城に着くと、お姫さまとすぐに結婚する事になります。
このあたりまでは、どこかの神話か、旧約聖書あたりで読んだような展開です。
どのお話だったかは、今はっきりしませんが。
さて、お城に戻った王様はびっくり、そこで、悪魔の金の髪の毛を3本、持ってくれば
お姫様との結婚を認めると言う約束をします。もちろん、王さまは、地獄に行けば、
戻ってこられないと、考えたのです。でも、マルコは、金の髪の毛を持ち、悪魔の
宝まで持って帰ります。
王さまは、この宝を見て、自分も地獄へ行って宝を取って来ようと、考えます。
そして、例の川の渡し守に、当然舟を押し付けられてしまいます。
「例の川の渡し守」・・・・ご存じない方へ・・・マルコは、地獄に行く前に、
川で渡し守に渡してもらいます。渡し守は、渡し守を辞めたいのですが、
その方法が分からずにいました。マルコは、川を渡してもらったお礼に、
悪魔のおばあさんからやめる方法を教えてもらい、渡し守に教えます。
この渡し守に教える場面も、他の本とは少し違います。普通は、渡リ終わって
岸に上がってから教えるのですが、(当然、舟を押し付けられたら大変ですから)
この本では、舟に乗っている間に教えます。
この本の装丁も変わっています。題名が表に書いていません。裏にあります。
表には、ナタリー・バビットとフレッド・マルチェリーノの名前が、まるで、
題名のように描かれています。この二人の名前で、十分に手に取ってもらえる
のでしょう。この絵本を読むと、納得できます。
「あくまの三本の金のかみの毛」 ナニー・ホグロギアン/さいわ・え あしのあき・やく
上記の絵本と同じ原作のものです。
こちらの題名が、普通に知られているものです。
この絵本は、おそらくグリムの原作に忠実に、書かれたもので、若者が、
あくまのところへ行く時に、エピソードがよけいに2つあります。
ぶどう酒の出なくなった泉と、金のりんごがならなくなったりんごの木です。
そして、渡し守については、岸に上がってから、教えました。
絵は、優しい色使いでですが、おしゃれな感じです。
「ロバのおうじ」
M.ジーン・クレイグ/さいわ バーバラ・クーニー/え もきかずこ・やく ほるぷ出版
これもグリム童話です。
こどものいない王様と王妃様が、まほうつかいに頼んで子どもを授かります。
ところが、王様が魔法使いへのお礼を約束どおりにしなかったために、
怒った魔法使いにより、ロバの王子が生まれます。
王子はとても賢く、外見がロバである以外はりっぱな王子でしたが、
王様も王妃様も、優しくしてはくれませんでした。王子は、城にやって来た
吟遊詩人にリュートを習います。そして、リュートをもって、ロバとして旅
に出てしまいます。
旅先で、素敵なお姫さまに出会いますが、そのお姫さまは、他所の国の王子と
結婚する事になります。ロバの王子は、再び旅に出る決心をして、お姫さまに
別れの曲を弾きます。すると、お姫さまはロバの王子が、好きだからどこへも
行かないで欲しいと、頼みます。「あなたがすきなの、あなたがなんだろうと
きにしないわ」と。
もちろん、この後は、ロバの王子は、素敵な人間の王子様になります。
そして、お姫さまと幸せになります。
でも、お話の途中は、ロバの王子の寂しさが、とても辛いです。
自分のせいではないのに、疎外感を味合わなければならない辛さ、しかも、
実際の両親から・・・・。
クーニーの絵は、その孤独がとてもよく表れています。
ロバの姿で、リュートを弾く中表紙も、孤独の中に、一種の安らぎを
感じる絵です。
「金のひかりがくれたもの」
ピョートル・ウィルコン/ぶん ジョゼフ・ウィルコン/え 久山 太市/やく 評論社
ジョゼフ・ウィルコンは、ポーランドの絵本作家です。
同じウィルコンなので、文章の作家もポーランドの人でしょう。
偉大な魔法使いコルネリウスは、一夜の宿を求めて、お城にやってきました。
コルネリウスは、お礼に金の鳥かごを、王様に差し出しました。コルネリウスは
色々な物を、魔法の力で金に変える事ができるのです。
それを知った王さまは、お城中を金に変えるまで、コルネリウスをお城にとどめようと
します。
コルネリウスは、王さまの求めに応じ、お城を金に変えていきましたが、ある日、
とうとう、逃げ出していきました。その後を追った王様は、夕日が輝く様子をみると、
「なんと海まで金色だ。これに比べれば、わしの金の城など、しずくのほんのひとたらしに
すぎぬわ」と、気が付きます。そして、自分は、金を欲しがるあまりに、大事な友人を
なくしてしまったと、嘆きます。
しかし、コルネリウスは、数年後戻ってきます。結婚する事になったお姫さまに
素敵なプレゼントを持って。
金色を効果的に使った、美しい絵です。王さまの顔などは、かわいらしく描かれていますが、
絵全体は、大人向きの感じです。中世的な世界を描いた風景と、光の描き方が、
印象的です。
「はらぺこライオン インド民話 」
ギタ・ウルフぶん インドラプラミット・ロイえ 酒井 公子やく アートン
インドの民話とありますが、古代東インドに良くみられるお話だそうです。
同じテーマの話は、インドをはじめ他の諸国にありますので、どこかで聞いた話だと、
思える内容です。この絵本はギタ・ウルフが民話を元にして書いたものですが、
独創的、創造性にあふれた作家で、多数の賞を受賞しているそうです。
因みに、女性です。
絵は、インド西部に住むワルリー族に伝わるワルリー画風に描かれています。
ワルリー族は、森羅万象に精霊が宿ると考えています。そのワルリー族が、描く絵で
題材は、日常生活、神話、伝説などです。描き方は、家々の赤土の壁に、米をすり潰し、
水で溶かした顔料で竹のペンを用います。
この絵本では、お米の籾殻と木綿の繊維から作られた再生紙を使用し、手捺染という
技法で描かれました。
この作家も現代インドで最も期待されている現代美術家の一人で、多数の賞を受賞して
います。
土器に描かれている絵か、古代エジプトの象形文字を思わせる絵で、シンプルながら
暖かな感じです。
ライオンは、インドにもいるそうで、猛獣の王が知恵の在る餌(鳥、ヤギ、鹿)に
騙されるお話は、為政者がしたたかな民衆に騙されたようで、面白いです。