季節限定特集 ツヴェルガーのクリスマス
絵本館Top
リスベート・ツヴェルガーの作品から クリスマスの絵本を集めました。 いずれも古典の名作です。 ツヴェルガーは、子供のときから、たくさんの物語に 親しんでいました。このため、ツヴェルガーの描く絵は、 物語の細部まで、読み込んだしっかりとした情景になっています。

「クリスマス・キャロル」
         リスベート・ツヴェルガー・絵   チャールズ・ディケンズ・作   太平社

ディケンズの「クリスマス・キャロル」です。
有名なお話なので、すべて読んでいなくても、あらすじくらいはご存知の方が、
多いと思います。特に最近は、「あらすじで読む世界の名作」?なんかも
ありますから。

思い描いていた通りの、スクルージさんが登場します。まったくけちで気難しい
年寄りです。そこに登場する幽霊の描き方も、なるほどと思います。
体が透けて向こう側が見えるけど、すっかりは見えず幽霊の存在がしっかり分かる
という具合です。

このお話は、スクルージさんが幽霊に導かれて、過去、現在、未来を見てきて、
心を入れ替えるお話です。それも、クリスマスの晩に。
そのお話の雰囲気そのままに、絵は描かれています。

文章も読みやすい訳ですので、文字ばかりのものより、楽しめると思います。
絵は、絵本ですが、挿絵状態で5,6ページに一枚程度です。


「クリスマスのまえのばん」  クレメント・クラーク・ムーア・詩
            リスベート・ツヴェルガー・絵   江國 香織・訳   BL出版

amazon
この本も、たくさんの人が絵を描き、出版されています。
絵本館でも2冊アップしています。

比較的新しい絵本です。以前の訳より、江国香織の訳は、ずっと親しみやすく、
読みやすい感じがします。そこに、ツヴェルガーの絵が、気持ちよく描かれています。
いかにもツヴェルガーであると言う風に。

面白いのは、絵本の最初と最後にネズミさんがベッドに寝ているところが、
描かれています。文章の最初に、「それこそねずみいっぴき めざめているものは
ありませんでした。」とあるのです。
ツヴェルガーは、きちんと描き込んでいるのです。物語の細部まで。

この絵本は、クリスマス向けということもあり、金色、銀色が効果的に
使われています。しかし、いつものツヴェルガーらしくシックに大人向けの絵で、
楽しませてくれます。


「くるみわり人形とねずみの王さま」 
E.T.A.ホフマン原作 / リスベート・ツヴェルガー絵  山本定祐/訳 富山房

「くるみわり人形」DVD amazonでDVD検索してあります。
ツヴェルガーの絵ということで、遠い図書館から取り寄せてもらいましたが、
この本は、絵本というより絵が挿絵状態になっています。
訳者によると、ツヴェルガーの原作本(向こうで出版された原著)では、
お話が短くなっていたので、訳者がホフマンの原作を訳したということです。
そのために、ツヴェルガーの絵は、挿絵状態のようです。
ツヴェルガーのファンとしては、訳者よ、何てことを!です。

ということで、物語は、原作どおりに訳されています。このため少し絵本としては、
文章量が多いようです。しかし、初めて「くるみわり人形」を読むには、手ごろな
本ですので、その意味では、お勧めです。
ツヴェルガーの絵は、ところどころに出てきます。

ツヴェルガーの「くるみわり人形」は、下記の絵本もあります。
ツヴェルガーに興味がおありの方は、下記の方が良いと思います。
「くるみ割り人形」
E.T.A.ホフマン原作 / リスベート・ツヴェルガー絵 / ズザンネ・コッペ文 / 池田 香代子・訳  BL出版

amazon
この絵本は、上記の絵本を描いてから、23年経ってツヴェルガーが、
もう一度新しく描き直したものです。以前の絵が気に入らないなどの理由ではなく、
もう一度描いてみたいという気持ちだったようです。

前作以上に、素晴らしい絵になっています。文のズザンネ・コッペによる「まえがき」によると
ツヴェルガーは、ホフマンの力ある言葉、ユーモアとウィットにとんだ物語が、
大好きだそうです。

前作の絵本より絵はやや象徴的な感じです。描かれた部屋の様子も、家具などを詳しく
描かずに、簡素化されています。
文章もコッペが短くしているそうです。ただ、何冊か「くるみ割人形」を読んでいるので、
このテキストは、やや違和感があります。おそらく、初めて読む人は感じないと思いますが。

BGMつきの朗読のCDがついています。


「賢者のおくりもの」   オー・ヘンリー文  リスベート・ツヴェルガー画  矢川澄子・訳  冨山房
表紙画像はありませんが、amazonにリンクしています。英語版の表紙を参考に貼り付けました。邦訳も同じ表紙です。
クリスマスの贈り物、欧米では当然のことのようです。
でも、日本では商業的宣伝が先行して始まった様な感があります。

オー・ヘンリーは、短編で「おっ!」とか「えっ!」とか言わせる小説をたくさん
書いています。このお話も、「えっ!なんでこうなるの」と、子供心に思った覚えが
あります。でも、落ち着いて考えれば、互いが大事にしているものを、売ってまで、
クリスマスには、贈り物をするのだという、欧米の考えも、すごいかもしれませんね。

今回、あちこちで、書評などを読んで、初めて知った事があります。それは、題名の
「賢者」の意味です。なぜ、この贈り物が賢いのか?昔から悩んでいました。
この題名の「賢者」とは、イエス様が生まれた時に、東方からやって来た3賢人の
ことで、その贈り物と言う事だそうです。欧米の文学は、聖書になじんでいないと、
いまひとつ、意味が分からない時が、あります。

文章が左ページに、ツヴェルガーの絵は、右ページに一枚ずつ入っています。
お話の内容を知っている為もありますが、絵を見ただけでも、ストーリーが
追えます。若い夫婦の息遣いも聞えてきそうな、絵です。


「わがまま大男」 オスカー・ワイルド文 リスベート・ツヴェルガー画  冨山房
英語版の表紙を参考に貼り付けました。邦訳も同じ表紙です。
このお話も、絵本館ではすでにアップした絵本があります。
先にアップした絵本では、大男は所謂巨人なのかと思っていました。
そうです。かなり現実離れした物語として、感じていたのです。
おそらく、絵の描き方からそういうイメージだったのでしょう。

このツヴェルガーの絵は、現実のお話として「大男」を物語の中に、登場させて
くれます。少し背が高い男性として、描いているだけです。さらに、物語の中の
子供たちの様子なども、きちんと生活している人間の子供として描かれています。
最後に大男を迎えに来る「小さな男の子」(つまりは、イエス様)も、現実の中で
描かれているので、大げさな奇跡譚とは、なっていません。

静かな絵の中に、しっかりと大男の気持ちが現れています。
直接クリスマスの絵本ではありませんが、イエス様の登場する絵本ですので、
この特集で取り上げました。図書館等で捜して見てください。
ページtop  絵本館top  期間限定