時にはこんなことも  絵本館Top


「かいじゅうたちのいるところ」
「ぼくはおこった」
「てん」
「きっと みんな よろこぶよ!」
「オオカミだって・・・!」
「あるげつようびのあさ」
「まゆとおに」
「まゆとブカブカブー」


オンライン書店ビーケーワン:かいじゅうたちのいるところ 「かいじゅうたちのいるところ」 モーリス・センダックさく  じんぐう てるお・やく  富山房
センダックの絵本は、不思議でちょっと不気味な感じです。
かいじゅうって、「怪獣、海獣」なんでしょうか。
主人公のマックスはおおかみのぬいぐるみを着たら、いたずらを始めておおあばれとあります。
そして、お母さんに怒られると、遠いところへ船旅に出て、かいじゅうたちの王様になります。
かいじゅうたちの王様になったマックスは、とても楽しそうです。
でも、ある日、とても美味しいにおいがして。
マックスは、かいじゅうの王様をやめることにしました。、
おかあさんの夕ご飯には、かいじゅうより、なにより魅力が。

センダックの絵は、不思議な感覚です。
かいじゅうが画面いっぱいに広がり、目をぎょろりとさせています。
怖くはないけど、夜遅くひとりで暗がりでみたら、ちょっと不気味で、
後ろを振り返ってしまうかも。
文字は少なく、見開き2ページずつで進んでいきます。


オンライン書店ビーケーワン:ぼくはおこった 「ぼくはおこった」 ハーウィン・オラム文  きたむら さとし絵・訳  評論社
上記の「かいじゅうたちのいるところ」も同じですが、子供が怒るパワーとは
とっても大きなもの、というテーマのようです。

「テレビばっかり見て」とお母さんに怒られたアーサーは、怒り始めます。
雷が鳴り、稲妻がはしり、雹が降ります。家の中はめちゃめちゃです。
「もうじゅうぶん」とお母さんに言われても、アーサーは怒り続けます。

家の外へ出て、町を壊し、最後には宇宙まで壊します。
やがて、宇宙で孤児のように、たったひとりベッドにすわり
「ぼく どうしてこんなに おこったんだっけ」と考えても、おもいだせなかったんだって。
と終わります。

子供って、怒り出すと手がつけられない時があって、嵐が行過ぎるまで、
ほうっておくしかない、ということをここまで、大きく書いたのでしょう。
当の子ども自身は、何に怒ったかも忘れてしまうのに。

この2冊の絵本は、子供の内包する力の大きさを「かいじゅう」「うちゅうをもこわす」
という形で、描いたものでしょう。子ども自身では、この力を制御することは不可能で、
大人もしばらくは、無理のようです。でも、おかあさんの夕ご飯に象徴される「愛情」に
寄って、子供を連れ戻すことができるようです。じゃ、「ぼくはおこった」には、「愛情」
を注ぐ人がいなかったのでしょうか。とちゅう「もうじゅぶん」という大人が、母、父、
祖父、祖母と出てきますが、困ったなて感じですが、怒ってはいません。この本は、子供の
力を感じることが主眼に置かれた絵本なのでしょう。だから、戻ってこないまま終わるのでしょう。
でも、ご安心、裏表紙をご覧下さい。きっとすべては、子供の心の中の嵐で、現実には、
どこにも行かなかったようです。

きたむらさとしはこの絵本でイギリスの絵本の新人画家に送られる、マザーグース賞を
受賞しています。また、この絵本は、以前は佑学社刊でした。(私のテキストは佑学社のものです。)

最後に、アーサーの宇宙の一人での姿に「2001年宇宙の旅」を思い起こすのは、
私だけでしょうか。


オンライン書店ビーケーワン:てん 「てん」 ピーター・レイノルズ作 / 谷川 俊太郎・訳   あすなろ書房
【世の図画ぎらいを勇気づける楽しい絵本】というキャッチフレーズの絵本です。
ワシテという図画が苦手な女の子は、お絵かきの時間が終わっても、絵は描けませんでした。
そこへ、先生が「あら!ふぶきのなかの ほっきょくぐまね」と。
おしゃれな先生です。
「かけないだけ!」というワシテに先生は「何かしるしをつけてみて」とアドバイスします。
ワシテが、紙の中央に「てん」をつけると先生が「さあ、サインして」と、絵を仕上げます。

ワシテは、「てん」ならもっとましな「てん」が描けるとばかりに、いくつも「てん」を
描きます。色をつけたり、色を混ぜたり、てんを描かずにてんをつくったりと。
何週間か後の学校の展覧会で、ワシテの「てん」は大評判になります。

そして、小さな男の子にワシテは「ぼくも かけると いいんだけど」と、尋ねられます。
ワシテは力強く「かけるわよ」と、男の子が、くねくねの線を描くと「サインして」

絵が描けない、絵が苦手という方もきっと何かきっかけがあれば、ワシテのように
描けるのです。そのきっかけを作ってくれた先生が、側にいれば尚いいですが。

訳は谷川俊太郎ですが、椅子に座っている場面を「いすに はりついている」と
いかにも、ワシテの気持ちをわかり易く、文章にしています。
やはり、訳というのは、日本語になるように、しているのですね。

作者は、中一の時の数学の先生に捧げると書いています。


「きっと みんな よろこぶよ!」 ピーター・スピアー  松川真弓やく  評論社
ほんと、スピアーはやってくれます。気分良くやってくれます。
こんなこと、貴方のお家に起きたら、どうします?
私は、もうお手上げ、笑うしかないかも・・・・。

子どもたちだけでお留守番、でも、本当は留守番の大人の人が、来るはずだったのです。
でも、きませんでした。そこで、子どもたちが始めた事は。
家のペンキの塗り替えでした。

朝、両親が出かける前に、「ペンキの塗りなおし、何時してくれるの?」という会話が、
あったのです。

こどもたち、お兄さん、お姉さん、小さな弟、それに犬と猫。
でも、一番大きなお兄さんでも小学校の高学年位です。その子どもたちが家中にペンキを
塗り始めます。自分の好きな色、足りなければ他の色で。
次第に塗りなおされる家と、犬と猫の色。そうです。犬と猫も近くにいるので、しっぽが
緑、顔が赤、身体がオレンジ、足が水色なんて、フルカラーです。

それでも、犬も猫も楽しそうに、駆け回ります。子どもたちも大満足です。
出来上がったら、きちんと片付けます。ペンキの缶は道端に、刷毛はお風呂で洗って、
はしごはペンキだらけのまま、ガレージに。
そして、「これで、ぜんぶ、やることはやった!」と太文字で書かれています。(^^ゞ

きっと、おとうさんもおかさんも喜ぶと思うよ。
最後の見開きは、圧巻です。
「ええ、ええ、それは、よろこぶことでしょうよ!」と太文字+大文字で書かれています。

小さな子どもたちだけのお留守番は気をつけましょうね。 (。^_^。)/


オンライン書店ビーケーワン:オオカミだって…! 「オオカミだって…!」ベッキー・ブルーム作 / パスカル・ビエ絵 / 中井 貴惠・訳  あかね書房
字の読めないオオカミが、本を読んだり、読んであげたりする楽しさを知るお話です。
読み聞かせの活動をしている中井貴惠の訳です。

お腹をすかせたオオカミが、ウシ、アヒル、ブタをみつけて食べようと思います。
ところが、この三匹は本を読んでいて、オオカミを一向に気にしません。
こんな事ははじめてと、オオカミもびっくりします。でも、本が読める動物だけの
広場だと、相手にされず、オオカミも本を読めるようになろうと、決心します。

最初は、字が読めるという程度でしたが、次第に三匹にお話をせがまれるほどに
上達します。その過程が、楽しく描かれていてます。

読み聞かせをしている人などは、大喜びの本です。本の楽しさ、読み聞かせの楽しさを
伝えていますが、決して説教くさくない楽しい本です。


オンライン書店ビーケーワン:あるげつようびのあさ 「あるげつようびのあさ」 ユリ・シュルヴィッツ作 / 谷川 俊太郎・訳  徳間書店
「よあけ」で有名なユリ・シュルヴィッツの作品です。
ニューヨークのアパートに暮らしている少年のところへ、ある月曜日の朝、
王様と女王様と王子様が訪ねてきます。でも、少年の「ぼく」は留守でした。
すると王子様が「そんなら かようびに またこよう」と帰っていきます。
そして、火曜日には一人増えて、水曜日にも一人増えて・・・・と、毎日
一人ずつ増えてやってきますが、ぼくはいつも留守です。

やがて、日曜日、とうとうぼくと王様たちは会うことができました。
部屋の中にいっぱいにやって来た人たちは、どこかで見た人のようです。
最後に種明かしが、描かれています。

シュルヴィッツの「あめのひ」が好きです。その「あめのひ」と
同じような雨の朝から始まります。訳者の谷川俊太郎によると、ニューヨークの
ソーホー地区の雰囲気が、よく出ているということです。

やや抑えた感じの色で描かれた絵は、ペンの線で影が付けられ、
落ち着いています。でも、楽しそうな様子が読者に伝わってくる動きのある絵です。


オンライン書店ビーケーワン:まゆとおに 「まゆとおに」 富安 陽子・文 / 降矢 なな・絵   福音館書店
このお話は、表紙を見ても分かるように、鬼より小さな女の子の
方が上手だったというお話です。
この作品には、副題があります。「やまんばのむすめまゆのはなし」です。

「きたの おやまの てっぺんの さんぼんすぎの したに 
ちいさないえが ありました。」ではじまります。背の高いやまんばとその娘まゆが
住んでいます。ある日、まゆは林の奥で、とんでもなく大きな人に出会います。
頭に鹿でもないのに角を生やした人、赤鬼でした。でも、まゆは鬼とは知りません。

まゆは、鬼に連れられて、岩屋に行きます。鬼はまゆを食べようと考えていました。
そこで、まず、火を熾します。まゆが手伝おうと言うので、薪を集めてくるように、
頼みますが、なんとまゆは傍にあった松ノ木を引き抜きます。次に、火の周りに
石を置く為に、岩崖をけり、岩のかけらを集めます。それを軽々と持ち上げ、火の
周りにおきます。

その火の上に、鬼はまゆを茹でる為の鍋を置くのですが・・・・。
鬼はそれを風呂だとまゆに説明したので、まゆは親切な人には、礼儀正しくすることと
言われたことを思い出し、「おさきにどうぞ」と、鬼を抱え上げ、鍋の中へ。

鬼は、お尻に大やけどを負い、まゆに背負われて、やまんばのお母さんの所へ
帰ります。やまんばは、お尻のやけどに膏薬を貼って、お腹のすいていた鬼のために、
おにぎりをたくさん作ってくれました。それから、まゆと鬼は仲よくなりました。

お話の中に、きつねの出番はありませんが、絵の中には、必ずきつねがいて、
まゆを心配そうに見ています。最後には、一緒にご飯を食べたり、遊んだりしていますから、
やまんばとまゆの家族かもしれませんね。

絵の降矢ななは、「ともだちや」のシリーズを描いている作家です。とてもかわいい絵を
描きます。まゆが元気はつらつとしていますし、やまんばも今までのイメージのやまんばじゃ
ありません。でも、ちょっと、カッコイイですよ。スタイル良くて、力持ちで。
最後に出てくるおにぎり、とても美味しそうです。


「まゆとブカブカブー  やまんばのむすめ まゆのおはなし」
富安陽子・文 降矢なな・絵  福音館書店

上の絵本のシリーズものです。
秋の山に、「ブカブカブー」という化け物が、出ます。森の動物たちは、逃げ回り
ますが、まゆはその正体を見ようと、出かけます。

赤い帽子のブカブカブーとは・・・・・森のキノコです。たくさんのキノコを
おかあさんのやまんばと一緒に、取ってきて、おかあさんが美味しいキノコご飯を
炊いてくれました。
上記絵本の鬼さんも、ちゃんとお招きに預かってますよ。

やまんばのおかあさんが、最初にまゆに言う言葉に、カルチャーショックを
受けますよ。雨の中を出かけるまゆに「みずたまりをみつけたら、できるだけ
どろはねがあがるように とびこむんだよ」と、もちろんまゆは元気よく
「うん、わかった」です。(^^ゞ
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