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「あたまにつまった石ころが」
「たいせつな きみ」
「そのままのきみがすき」
「しずかな きせき」
「クリームきみならできるさ」
「エリザベスは本の虫」
「木を植えた男」
「百年たってわらった木」
「でんでんむしのかなしみ」
「満月をまって」
「にぐるまひいて」
「オレゴンのたび」
「バスラの図書館員」
「樹のおつげ」
「くろねこのかぞく」
「駅のおかあちゃん」


オンライン書店ビーケーワン:あたまにつまった石ころが 「あたまにつまった石ころが」  キャロル・オーティス・ハースト文 / ジェイムズ・スティーブンソン絵 /
千葉 茂樹・訳  光村教育図書

「好きなことだけをしていて、食べていけるならば」と、誰もが思い、
そんなことはできないと、誰もが、何かしら食べていける職を選びます。
でも、それをしなかった人が、この本の作者のお父さんです。

石ころ集めが大好きなおとうさんは、友人や奥さんから
「あたまに石ころが、いっぱい詰まっている」といわれていました。
世の中が不況で、商売がうまくいかなくなっても、石集めをやめることなく、
また、石についての勉強もしています。
でも、結局、好きなことを手放さず、そのおかげで、
科学博物館に職を得ることができたのです。

こんな結果になる人は、稀なのでしょう。
でも、好きなことを手放さず、どんな時でも、続けていくことが、
大変でも、とても素敵なことだと、思い出させてくれる本です。

是非読んで!!厳選!!にもリストアップしました。




「たいせつな きみ」 マックス・ルケード/文 セルジオ・マルティネス/絵 ホーバード・豊子/訳
             いのちのことば社フォレストブックス

たいせつなきみ クリックしてください。Amazonで表紙確かめられます。

ウイミックスという小さな木のこびとが、きんぴかのお星さまシールと
はいいろのだめじるしシールを張り合って暮らしています。
パンチネロというこびとは、だめじるしばかり張られて、
落ち込んでいましたが、シールが張り付かないルシアに出会って、
ウイミックスの作り手、彫刻家のエリに会うことを勧められます。
エリは、「皆がどう思うかなんて たいしたこじゃない、皆同じウイミックス
じゃないか、わたしは、おまえをとてもたいせつに思っているよ」と
いうのです。
パンチネロは、とてもうれしくなりますが、シールが気にならなくなるのには、
時間がかかるようです。

このおはなしは、牧師さんが書きました。ということで、エリが誰で、
ウイミックスが誰かは、すぐに分かります。そして、シールが何かも。
それでも、落ち込んだ日に読んでみると、そうだよね、シールなんか、
どうでもいいんだよ、って。

原作者は、アメリカで人気のある作家だそうです。



オンライン書店ビーケーワン:そのままのきみがすき 「そのままのきみがすき」 
マックス・ルケード著 / セルジオ・マルティネス絵 / ホーバード・豊子訳N/A いのちのことば社

上記と同じ作者の絵本です。
5人の親のない兄弟が、王様の養子になることになり、王様に気に入ってもらおうと、
考えます。一番上の兄は木彫りの彫刻、2番目の姉は絵、3番目の姉は音楽、4番目の兄は学問
みな王様に気に入ってもらおうと一生懸命です。

ところが、末の娘だけが何もできません。上の兄弟たちに教えてもらおうとしても、
皆忙しくて、振り向いてくれないのでした。
末の娘は心優しい娘で、村はずれに立って、通りがかる人や動物の世話をするのが
好きでした。また、どんな人とも話をする優しさがありました。
でも、何もできないと思った娘はいつもの通り村はずれで、旅人の世話をしていました。

そこへ、王様が身分を隠してやってきたのです。
上の兄弟たちは、王様と思わず、忙しいから会えないと断ってしまいます。
王様は「王様でいるってことは、さびしい時もあるんだよ」と、だから、
「ただ、みんなと話したい時があるんだよ。ただ、お父さんとして」
と末の娘に話します。

王様に「才能も贈り物もないけれど、私を王様の養子にしてください」と末の娘が話すと
「わたしのかわいいこよ。お前は、とびっきりのおくりものを
わたしにくれたんだよ。やさしい心をくれただろう?
わたしと一緒に時間をすごして、わたしをすきだってことをしめしてくれた。
もちろんおまえをわたしの子どもにしよう。
わたしはそのままのおまえが大好きだよ」と。

おそらく、「たいせつなきみ」同様、王様は神さまと考えることできます。
だから、わたしを(神を)愛してくれる子よ。おまえはそのままでわたしを愛して、
優しい心を持っていれば、それでいいのだよ。
と言っているのでしょう。

それを考えても、けれんみのない文章で、素直に読めるところが、人気のある作家
なのでしょう。
また、絵も同じ人が描いていますが、こちらも素直な感じのいい絵です。

最後に、上の兄弟4人は十分に自活できるでしょう。心配ないですね。(^^ゞ


オンライン書店ビーケーワン:しずかなきせき 「しずかなきせき」 マックス・ボリガー さく シュテパン・ザブジェル え  みやはらたおこ・やく
          新世研


ドイツの絵本です。欧米の「きせき」は、神様についてのことが、多いようです。
この絵本も、軽業師の少年が聖母マリアに、軽業の祈りを捧げるというお話です。

軽業の生業が嫌になった少年が、谷あいの古い修道院に暮らすことになりました。
しかし、修道士たちと一緒に祈りを捧げることが出来ず、修道院でなにをして
暮らしていけば、わからなくなります。その時、地下にある忘れられた聖母マリア像に
軽業を見せたところ、像が光り輝くという奇跡が起きたのです。
その後、軽業の祈りは、修道士たちの知るところとなりますが、「きせき」であることが
わかり、公に軽業で祈りを捧げることが赦されるというお話です。

あまり、派手なお話ではなく、本当に「しずかな きせき」です。
軽業の祈りを求める神様は、その人間の持てるものすべてで、祈りを捧げればよいと、
教えているのでしょうか。
どうしても、勉強不足(子どもの頃からの環境と思いますが)で、
キリスト教的考えがわからないことが多いです。

絵は、版画による物のようで、茶色と青の色が多く使われています。
この本の、ドイツ語版もあります。


オンライン書店ビーケーワン:クリームきみならできるさ 「クリームきみならできるさ」  宮西 達也/作・絵  学研
クリームという名前のねこが主人公です。
人格化された猫たちが繰り広げる人生案内みたいな物語です。でも、お説教くさくなく、
さらりとユーモアを交えて、「あなたはあなたで、それが素晴らしいことだよ」と教えてくれます。
お話しも長い物ではなく、平均4,5ページの短いお話の集まりです。

わたしは、とても真剣にがんばろうって、声高に言うのじゃなく、あなたは本当に素晴らしいのだから、
やればできるよ、って、やさしく言ってくれるところが、お気に入りです。
それで、結構「えっ!」っていう落ちがついていたりして。楽しいです。


オンライン書店ビーケーワン:エリザベスは本の虫 「エリザベスは本の虫」 サラ・スチュワート文 / デイビッド・スモール絵 / 福本 友美子・訳
アスラン書房

サラとデイビッドは、夫婦で作品を作っています。「リディアのガーデニング」も
二人の作品です。
この絵本のはじめに「実在のメアリー・エリザベス・ブラウンに捧げる」とあります。

エリザベスという本の大好きな女性のお話です。何より本を読むのが好きで、
子供らしい遊びもせず、年頃にデートもせず、もちろん独身で、気が付いたら、
本で部屋がいっぱいで、ドアもふさがってしまいました。
エリザベスは潔い解決方法を見つけます。
全てを町に寄付したのです。町には「エリザベス・ブラウン記念図書館」が出来ます。
それからエリザベスは、お友達の家に住みながら、本を読んで、読んで、読みふけったのです。

とてもうらやましいお話です。私もエリザベスのように暮らしたいです。
もっとも、ミニエリザベス部屋風には、本が積まれていますが、私の部屋も。

「リディアのガーデニング」も同じでしたが、見開きにも絵があります。
本棚の絵です。それも画面いっぱいに大きな書棚です。それを見ただけで、
本好きはため息が出そうです。
絵も水彩の感じの良い絵で、ページがアルバムの写真風にデザインされています。
エリザベスのアルバムなのでしょう。


オンライン書店ビーケーワン:木を植えた男 「木を植えた男」 ジャン・ジオノ原作 フレデリック・バック絵 寺岡 襄/訳  あすなろ書房
フランスのプロバンス地方の、山に分け入った土地のお話です。
主人公は、木を植える男ではなく、その男を見守る若い男です。
木を植える男は、寡黙で孤独の中で、誰に頼まれたのでもなく、
荒涼とした土地に、柏のどんぐりを植え続けます。
その数、10万個。そして、芽を出したのが2万個、という、
空恐ろしい事業をたった一人で、続けています。

近くの村人は、争いの中に生き、荒涼とした土地と同じく、
荒れ果てた心を持っています。
その中で、男は、妻子を亡くして以来、たった一人で、
木を植え続けているのです。

その後、若い男は第一次世界大戦に従軍し、心をすり減らします。
戦争から帰ると、木を植える男のところへ急ぎます。
男は、戦争も関係なく木を植え続けていました。
林は、長さ11キロ、幅3キロにもおよんでいたのです。

絵本の絵は、この場面から色が付きます。
ここまでは、セピアの一色の荒涼とした感じの絵でしたが、
このページから、瑞々しい緑が、描かれています。

その後は、環境を守ると言って口を出すお役人たちが
登場します。しかし、誰よりも男が一番木のことを
知っていました。
やがて、村が再興し若者たちが住み、生活を楽しむ土地へと
変わっていきました。

このことが、たった一人の寡黙な、偉大な男によって、
成し遂げられたのです。


オンライン書店ビーケーワン:百年たってわらった木 「百年たってわらった木」 中野 美咲・ぶん おぼ まこと・え   くもん出版
森の中にとってもかっこいい木がありました。
百歳にもなるのに、ぴんと枝をはって、いつも上を向いています。
いつでも、どんなときにもくたびれた様子を見せず、どうどうとして
います。

でも、ちょっと、寂しいことが・・・。
友達がいないのです。
いつもかっこよくして堂々としているのに、どうして、
友達ができないのか、毎日、さびしくて・・・・。

とうとう、木はうなだれてしまいました。
すると、うなだれた木の木陰を、森の動物たち、虫たちが、
喜んで集まってきます。

本当は、上を向いているのが苦しかった木は、
無理をしなくていいことが、やっと、分かりました。

そして、たくさんの生き物が集まってくるようになった木は、
百歳らしく、ぼこぼこの木になりました。

頑張るばかりが、生き方じゃない、って、
やさしく語りかけてくれる絵本です。


「でんでんむしのかなしみ」  新美南吉・作  かみやしん・絵
amazonにリンクしています。表紙は、amazonでご覧下さい。
「一年詩集の序」「でんでんむしのかなしみ」「里の春、山の春」
「木の祭り」「でんでんむし」が、収められています。

なかでも、「でんでんむしのかなしみ」は、とても心に沁みてきます。
でんでんむしのカラの中は、かなしみでいっぱいという、発想が泣かせます。
それでも、誰もがそうなのだから、そのかなしみを抱えて、生きていかなくてはならない、
と悟るのです。

そのほかの作品も、柔らかな子供の心をやさしく揺するような、美しい物語です。
「ごんぎつね」位しか知らなかった私は、もう一度新美南吉を読み直そうという思いを
この本に感じました。

ちょっと背伸びして、頑張っている時に、やわらかなこころを思い出してみると、
楽になるかな、って思います。

絵も文章にあった、淡い色使いの絵です。筆にいっぱい水を含ませて、描いた感じです。
この描き方、結構好きで、子供の頃自然にやっていました。でも、絵の先生に「だめ!」
と言われ、筆に水をつけさせてもらえなかったことを思い出しました。


「満月をまって」 メアリー・リン・レイぶん   バーバラ・クーニーえ  掛川 恭子・やく  あすなろ書房
バーバラ・クーニー最後の絵本です。といってもクーニーは絵ですが。
文のレイは環境保護活動家と説明があります。また、アメリカの手工芸について、学芸員時代に
研究していたそうで、この絵本も経歴で納得です。

今から100年以上前、アメリカのニューヨーク州ハドソンから、それほど遠くない山間の地方に
かごを作って生計を立てる人たちがいました。その人たちをモデルに、技術が受け継がれること、
静かな情熱について、描かれた絵本です。

主人公は、9歳の少年です。少年の住む山間では、耕作することも狩りをすることもできません。
生計は丈夫なかごを編み、それをハドソンで売ることで、立てられていました。
少年は、小さな時から、父とハドソンに行くことを楽しみに待っています。でも、なかなか父は
一緒に行ってよいとは、許可しません。

「満月をまって」とは、父がハドソンに出かけるのは、暗くなっても歩ける満月の日に、行くからです。

少年は父がかごを作ることを誇りに思い、自分もかごを作ること、木の声を聞くことを、
楽しみにしています。
9歳になった満月の日に、やっと、ハドソンに行く許可が下りました。
少年は喜んで、父とハドソンに出かけますが、思いがけなくハドソンで、酷い言葉を投げつけられます。
その日から、少年はかご作りを恥じ入る様になります。今まで考えていたように、誇りに思う
ことではないのだと、思うようになるのです。

そんな日が幾日が過ぎたある日、少年は納屋に積んであったかごを蹴飛ばします。
そこへ、父の仕事仲間がやってきます。彼はその様子を見て、「風はおれたちにかごをつくること
をおしえてくれたんだ」と静に語ります。オークの葉が一枚、少年の足元に落ちます。
少年はこの時から、町の人を気にせず、自分の父親やその仲間の人たちのように、なりたいと
思うようになります。「風がえらんでくれたひとになりたいと」思ったのです。

この人たちが作ったかごは、とても丈夫で、いまでも使えるほどです。
たくさんのかごは、博物館、個人の納屋で残っているそうです。
でも、かごは今は他の物に(紙袋、段ボール箱、ビニール袋)取って代わられ、
作る人はいないそうです。
「にぐるま ひいて」
ドナルド・ホール/ぶん  バーバラ・クーニー/え  もき かずこ・やく  ほるぷ出版

1980年にコールデコット賞を受賞したクーニーの作品です。
ぶんのドナルド・ホールは、国中を歩く詩人として有名だそうです。
この作品の文章も詩の様な感じです。ただ、創作ではなく、近所に住んでいたいとこに
聞いた話だそうです。しかも、そのいとこは、幼い頃ある老人から、その老人は子どもの頃、
大変なお年寄りから聞いたのだそうです。

アメリカの古い時代の暮らしを、描いた作品です。その意味で、上の「満月をまって」と
よく似た雰囲気を持っていますが、こちらは、もっと静に淡々と一年の生活の様子を描いて
います。

10月に父親が、家族中で作った物を積んで、荷車を引いて町に行きます。
娘が作った手袋、息子が作った箒、母が作ったショール、畑で収穫したものなどを、町で
売り歩きます。そして最後に、荷車、荷車を引いていた牛まで、売ってしまいます。

たくさんのお金をポケットに、次はお買い物です。
娘に刺繍針、息子にナイフ、妻に鉄鍋、そして、家族中にはっかキャンディ。
長い時間かかって家にもどると、さっそく新しい鍋でお料理して、食後にはっかキャンディを
なめます。そして、食後すぐに、納屋のわか牛のための手綱を編み始めます。

こうして、一年が淡々と、順々と過ぎていくのです。
古いアメリカだけではなく、どの国も同じだったでしょう。そんな暮らしの中に、
ささやかなはっかキャンディが、幸せを感じさせます。
穏やかで、気持ち静に暮らしていた古きよき時代です。

でも、正直、今この暮らしをと、強制されても、きっとすぐに逃げ出してしまいます。
現代人です。はい。


オンライン書店ビーケーワン:オレゴンの旅 「オレゴンの旅」 ラスカル文  ルイ・ジョス絵 山田 兼士・訳  セーラー出版
オレゴンというクマとピエロのデュークのお話です。
二人は、星のサーカス団にいましたが、ある日、オレゴンが「大きな森へ連れてっておくれ」
とデュークに頼みます。

デュークは、考えました。オレゴンはクマでエゾマツのきれいな森で、仲間と暮らすべき
だと、そして、一緒に森へ行けば、デュークの白雪姫にも逢えるかも知れないと。

ピエロのデュークは、小人であることから、舞台が終わっても化粧を落とさず、
赤い鼻をつけたままでいたのです。おそらくは、自ら人間の仲間を拒絶していたのです。
でも、それがはっきりと語られるのは、オレゴンとの旅の途中です。

旅の途中乗せてもらったトラックの運転手に「なぜ、化粧を落とさない?」と
尋ねられます。デュークは「顔にくっついてとれないんだ。小人やってるのも
楽じゃないんだよ。」と答えます。
運転手は「じゃあね。世界一でっかい国で、黒人やってるのは、楽だと思うかい?」って。

ヒッチハイクをし、貨車に乗り、オレゴンとデュークはオレゴンを目指します。
中でも、圧巻は表紙にも使われている、麦、あるいは枯れ草の草原の中を、オレゴンが
デュークを肩車していく姿です。
「ぼくの赤い髪は風になびいて
ぼくは突っ切って行く、ヴァン・ゴッホの風景の中を・・・ もっと美しい場所へと。」
何故か、意味があるのか、本文中と表紙では向きが逆になっています。

オレゴンはオレゴンに!ぼくは約束を果たしたぞ・・・

で、オレゴン州の深い森に着いた場面は、クマのマークの標識です。
そして、デュークは今度は自分の旅に出ます。
赤い鼻を雪の中に残して。

各ページの文章は短く、様々な示唆に富んだ言葉が用いられています。
bk1の書評に赤木かん子氏が、アダルトチルドレンの癒しがテーマと、解説しています。
癒しがテーマの絵本では、なかなか良いものには当たらないような気がするのですが、
これは、何となく心が柔らかくなるような、明日も頑張ろうかな、って思える絵本です。


オンライン書店ビーケーワン:バスラの図書館員 「バスラの図書館員」 ジャネット・ウィンター絵と文   長田 弘・訳  晶文社
副題に「イラクで本当にあった話」とあります。
イラクのバスラの図書館員アリア・ムハムンド・バクルさんのお話です。
イラク戦争当時(といっても、今も戦闘中ですが)ニューヨークタイムズ紙に報じられた
記事から生まれた絵本です。
作者は、「私、ジョージア」「九月のバラ」を書いています。

表紙は、ちょっと頑固そうなおばさんが本を、抱えています。この人が、アリアさんです。
バスラに戦火が迫ってきた時に、アリアさんは図書館の大事な本を守るべく、役所と掛け合います。
でも、役所は相手にしてくれません。
アリアさんにとって、(いいえ、人類全員にとって)図書館の本は、黄金より価値のあるものです。
アリアさんは、自分の車に図書館の本を少しずつ移し始めましたが、戦火が迫ってくると、お役人も
兵士も図書館員も皆、図書館を見捨てて逃げました。残ったのは、アリアさんだけでした。

アリアさんは、迫ってくる戦火に「本を守りたい」と隣のレストランのアニスさんに、助けを求めます。
そして、一晩かかって、塀越しに3万冊の本をレストランに移しました。
レストランの従業員と、近所の人たちで。本を移して9日後に図書館は燃やされましたが、本は、
こうして守られました。

その後、本を自分の家と、友達の家に運びます。
「アリアさんは、戦争が終わるというのぞみをすてません」というページは、
平和なチグリス、ユーフラテス川を想像させる絵です。

現在、アリアさんは心臓病で療養中ですが、図書館の再建を見るまでは、と、
頑張っているそうです。


オンライン書店ビーケーワン:樹のおつげ 「樹のおつげ」 
ラフカディオ・ハーンげんさく / さいとう ゆうこ・さいわ / ふじかわ ひでゆき・え  新世研

ラフカディオ・ハーンというとまずは「怪談」を思い出しますが、
ハーンは日本文化を研究し論文も書いています。
この絵本は、ハーンの日本文化に関する論集「生神」に引用された浜口五兵衛のエピソードを
もとに再構成されたものです。

久作は引っ込み思案の子どもでしたが、ある時樹の上にいる女の子と知り合います。
この女の子は不思議な少女で、村の子どもではありませんでした。久作は少女と遊ぶうちに
自分にはできなかった、水泳や竹馬などもできるようになります。
そんなある日、少女は五日後に嵐がやってくる事を久作に教え、村の人に知らせるように
促します。このお陰で、村では大きな被害に遭わずにすみました。

久作はその後、村の子どもたちと遊ぶようになり、少女のことは忘れていきました。
そして大人に鳴った久作は村長になります。
取り入れも終わった秋のある日、久作がひとり縁にいた時地震が起こります。
地震は小さなものでしたが久作は不思議な声に導かれ、大きな樹の上に登り、
遠く津波が来るのを発見します。

その日、浜の近くの神社に村の者が多く集まり、祭りの用意をしていました。
久作は、その村人に津波を知らせる為に稲むらに火をつけます。村人は火事と思い
急いで山の上の久作の家に駆けつけ、津波を避けることができました。

その後、久作は村人の先頭に立って村の復興を行い村は復興します。
絵本は、年を取った久作が不思議な少女の事を思い出す場面で終わります。
不思議な少女は「樹の精霊」だったのだろうかと。

絵は藤川秀之です。この人の絵は「くもの糸」で見て印象が深くすぐに
同じ人の絵だとわかりました。グラフィックデザイナーを経てとありますが、
日本画の雰囲気です。絵本が大判でもあり美術館の絵を見ている雰囲気が
あります。

このお話は以下の「稲むらの火」として本にもなっています。
オンライン書店ビーケーワン:津波!!命を救った稲むらの火 「津波!!命を救った稲むらの火」 小泉 八雲・原作  高村 忠範/文・絵 汐文社

「くろねこのかぞく」 ピョートル・ウィルコン作 / ヨゼフ・ウィルコン絵 / いずみ ちほこ訳  セーラー出版
表紙画像はありませんが、bk1にリンクしています。
まっくろがおかのカシミールさんとカロリーナさんに生まれた、
4匹の黒猫と1匹の茶色い猫。
カシミールさんは、茶色い猫のロザリンドが、変わった事をするので、白髪になり始めます。

ネズミを獲ろうとしないし、犬と仲良くするし。
結局出て行ってくれて、一安心、その後は子どもや孫の、真っ黒い猫と静に暮らしていました。
ところが、ある日、茶色い猫のロザリンドが有名なロック歌手になっていたのを、テレビで知ります。
そして、ロザリンドはまっくろがおかを、子どもたち、4匹の茶色い猫と1匹の黒い猫を連れて
訪ねます。
両親は喜びます。
やがて、ロザリンドがツアーに出る時は、孫の面倒をみるようになりました。

何か、典型的な家族物語です。こんな話、あっちこっちにあるようですが、
それが、決してつまらなくないのです。
ロザリンドになった気分で、読んでみたり、カシミールさんやカロリーナさんに
なったりで、いろんな立場が見えてくるおはなしです。
登場人物?が猫というのも、なかなかです。

物語の作者は、絵を描いているヨゼフ・ウィルコンの息子さんです。
また、絵は幻想的な感じですが、猫の表情など細かい部分は、はっきりわかりやすいです。


オンライン書店ビーケーワン:駅のおかあちゃん 「駅のおかあちゃん」 まえだ まさえ・作 / 鈴木 博子・絵  講談社
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「ぼくの町の駅には、おかあちゃんがいる。
ぼくのおかあちゃんじゃないよ。
駅のおかあちゃんだ。」と、始まります。

駅のホームをお掃除したり、悪い事をしている人に注意したりする、ボランティアの
おかあちゃんがいました。いつもにこにこ、みんなの本当のおかあさんみたいです。
ある日、ぼくはボールが転がるのを取ろうとして、線路に飛び降りようとしました。
駅のおかあちゃんが、走ってきて腕を掴み「あぶない!!電車がきたら、しんじゃうんだよ!」
とぼくをぎゅっと抱きしめました。

それから、駅のベンチでどうして駅のおかあちゃんになったのかを、話してくれました。
駅のおかあちゃんは、大事な子供が死んでしまって、ぽっかり心に穴が空いたように
なった時に、駅にいる人が、みんな死んだ子どもに見えたのです。そこで、駅のおかあちゃんに
なって、みんなのためにボランティアのしていたのです。

ある日、駅のおかあちゃんが注意をした人は、おかあちゃんを突き飛ばしました。
すると、いつも注意されていた周りの人たちが、おかあちゃんを助けます。
周り中の人が、駅のおかあちゃんの味方です。乱暴した男が、すごすごと
逃げ出した後、駅のおかあちゃんはびっくりしましたが、「ありがとよ!
さすがはみんな、おかあちゃんの子だよ」と、大きな声で笑います。

心がほのぼのするお話に、ほのぼのする絵がついてます。


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