「正統派」
『ぼんさいじいさん』
『わたしのくまさんに』
『あたまにつまった石ころが』
『名前をつけるおばあさん』

「ぼんさいじいさま」 木葉井悦子 文・絵  ビリケン出版

とても優しい絵です。
表紙には、しだれ桜の盆栽の中に、小さくなったぼんさいじいさまが、
桜を眺めている様子が、描かれています。
絵の一枚一枚、(すべて見開き2ページ分が一枚の絵になっています。)
ていねいに見ていくと、動植物が細かく優しげに描かれています。

おじいさんが亡くなる日のことを、描いている本ですが、人生の終わりに
こんな最後があるならばと、ほっとするような、思わず微笑んでしまう絵本です。
そして、最後の見開きの絵、ぼんさいじいさまが、迎えに来たひいらぎ少年と
向こうへ逝ってしまう、手をつないだ後姿は、寂しさを感じさせません。



オンライン書店ビーケーワン:わたしのくまさんに 「わたしのくまさんに」 デニス・ハシュレイ/文  ジム・ラマルシェ/絵  今江祥智/訳 BL出版
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図書館で手に取ったとたん、いい感じの絵本と思いました。
中を見ずに表紙だけで何となく、素敵なお話だなと感じました。
(いつもそうだけど、今回の本は特に)
感じたとおり、何度読み返しても、その度に素敵だと思える絵本です。

森の若いくまが、森の中に避暑に来ている女性(若すぎず、年寄りでもない)に、
本の読み聞かせをしてもらい、秋になると、女性が置いていってくれた本を巣穴に
運び込み、冬の間中本を仲立ちに、女性の声を聞き続ける、というお話です。

この絵本は、不思議な副詞が使われています。そこが、とても魅力的です。
「くまはゆわんとふりむいた。」
この表現大好きです。本文中、ブルーの字は点が付いています。
こんな副詞が幾つか出てきます。普通使わないかなと思う言葉ですが、
使われている箇所では、表情や心情が伝わり、納得の使い方です。
でも、これは翻訳絵本なので原文はどんな言葉なのか、知りたくなりました。
(原文見ても分からないけど・・・(^^ゞ
翻訳者の素晴らしさです。

柔らかい絵の感じと共に、柔らかな文章も味わってください。


オンライン書店ビーケーワン:あたまにつまった石ころが 「あたまにつまった石ころが」 キャロル・オーティス・ハースト文 / ジェイムズ・スティーブンソン絵 / 千葉 茂樹・訳  光村教育図書
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「好きなことだけをしていて、食べていけるならば」と、誰もが思い、
そんなことはできないと、誰もが、何かしら食べていける職を選びます。
でも、それをしなかった人が、この本の作者のお父さんです。

石ころ集めが大好きなおとうさんは、友人や奥さんから
「あたまに石ころが、いっぱい詰まっている」といわれていました。
世の中が不況で、商売がうまくいかなくなっても、石集めをやめることなく、
また、石についての勉強もしています。
でも、結局、好きなことを手放さず、そのおかげで、
科学博物館に職を得ることができたのです。

こんな結果になる人は、稀なのでしょう。
でも、好きなことを手放さず、どんな時でも、続けていくことが、
大変でも、とても素敵なことだと、思い出させてくれる本です。



「名前をつけるおばあさん」
   シンシア・ライラント文  キャスリン・ブラウン絵  まつい たかえ訳  新樹社

長生きをしたお陰で、お友達が皆亡くなってしまったおばあさんの物語です。
おばあさんは、「ベッツィ」と名づけた車に乗っています。ベッドは「ロクサーヌ」
住んでいる家は「フランクリン」です。自分の身の回りにある物に、名前をつけて
いました。おばあさんは、お友達より長生きだったので、だれからも手紙もこない、
名前を呼んでももらえなかったのです。だから、自分より長生きする物たちに名前を
つけて、呼んでいました。誰の名前も呼ばない寂しい生活は嫌だったのです。
こうして、おばあさんは、じぶんより長生きするものたちに囲まれて、
幸せに暮らしていました。
 
でも、自分より長生きしそうにないものに、名前を付けるのは嫌でした。

ある日、おばあさんの家の、壊れかけた門の所に、子犬がおずおずとやってきました。
門は壊れかけていたので、名前はありません。おばあさんは、おなかをすかした子犬に
ハムを上げると「うちにお帰り」といいました。子犬は、行ってしまいました。
ところが、それから子犬は毎日やってくるのです。
     
やがて、子犬はもう子犬とは呼べないほどに大きくなりましたが、おばあさんの
家の門にやってくるのでした。毎日食べものをやりながら「うちへお帰り」と、
おばあさんは、いい続けました。
ところがある日、おとなしい茶色のこの犬は、おばあさんのところへ来ませんでした。
おばあさんは、すわりこんで、大人しい茶色の犬のことを考えました。
そして、決心しました。フラクリンにカギを掛けて、ベッツィを運転し、迷子の犬たちの所へ。
優しい色合いの絵が、気持ちを和ませます。さらに、最後は涙無しでは。

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